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ビジネス・インテリジェンスは究極の活用形へ

“アクティブ・エンタープライズ・インテリジェンス”とは?

金井 啓一
EDW戦略&コンサルティング統括部
統括部長/エグゼクティブ・コンサルタント

現在、あらゆる業界で、各企業は非常に厳しい競争にさらされています。その中で 90年代から始まった情報を経営に活かすデータウェアハウス(DWH)の仕組みは、今や企業のいわゆる情報系のシステムとして規模や適用範囲の差こそあれ、何らかの形で取り入れられています。

ただ、その実態は例えば販売支援システムや業績管理システムのように、いまだに一部の業務向けや一部の部門向けの仕組みが多いようです。しかし、この 3〜4年、ようやく DWH を企業全体に広げる動きが目立ってきました。

これこそが、弊社が数年前から提唱してきた“エンタープライズ・データウェアハウス(Enterprise Data Warehouse、略して EDW)”への拡張です。いくつかの先進的な企業が、競争優位を確立させ企業全体の差別化戦略を支援する仕組みとして、実装しつつあります。

私は常日頃多くのお客様を訪ね、ユーザーの皆様の課題やニーズ・ウォンツをお聞きしていますが、最近これまでに無い傾向を感じています。それは“リアルタイム化”です。当稿では、そのニーズや現状の課題を分析し、弊社が新たに提唱する EDW の“アクティブ(Active)”化の方向性、かつその価値と活用方法などについて考察したいと思います。

ビジネス・インテリジェンスの現状

最初に、企業経営における情報活用の現状を明らかにします。弊社が以前行った意思決定に関するアンケート調査によると、日々下す意思決定の件数は 68%の企業が前年に比べ増加したと答えています。意思決定の複雑性は 45%が増大。意思決定を行うために利用可能なデータ量に至っては何と 96%が増えていると答え、52%は 2〜3倍に増加していると回答しています。

よくお客様からお聞きするのは、以前はデータを分析し意思決定に使うユーザーは本社の経営企画部門やマーケティング部門、管理部門が中心で、データも販売系や会計系のデータだった。しかし、この数年、業務の現場でもデータを活用するニーズが出てきており全社で活用するようになってきたということです。

例えば、会計の分野で言えば、これまでは管理部門が管理のために使っていましたが、全社の管理会計として各部門の販売戦略や戦術策定に使われるようになっています。データも多岐に渡っており、これまでは販売実績の集約データだけでしたが、取引明細や配賦データまで含めてより詳細なデータになっています。

以上から、情報活用や意思決定は以前のような特定の部門だけでなく全社の様々な部門でも行うようになり、しかもデータの種類・粒度・量、また複雑性も増加してきたということが分かります。ようやくこれまでの部分的な活用に過ぎなかったビジネス・インテリジェンス(BI)が全社的レベルに進化してきたと言えます。

全社レベルのビジネス・インテリジェンスの特徴と事例

全社で活用するビジネス・インテリジェンスにはどんな特徴があるでしょうか。4つあると考えています。1つ目は、特定の部門ではなく全社で戦略的意思決定を行えるという点です。2つ目は、経営者層から現場担当者までが統一化され一貫した視点でビジネスを捉えることができるという点。3つ目は、業務上必要な情報にダイナミックに迅速にアクセス可能だという点。4つ目は、意思決定・情報活用に必要なデータを全社から集め整合性を持って統合・一元化した EDW をベースにするという点です。

すなわち、EDW は統合された全社情報基盤であり、全社レベルのビジネス・インテリジェンスは EDW を活用している BI だと言えます。

では、どんな活用がされているのでしょうか。例えば、ある精密機器メーカー様では生産・販売で相互に情報が共有されておらず、生産・販売計画業務に必要な情報収集に多大な時間がかかり、不良在庫が発生していました。それらを解決すべく、全世界の完成品と部品の製・販・在の計画/実績データを収集し EDW化して全社の情報共有を実現しました。その結果、計画立案業務や需給業務が改善され、在庫を数分の一に減らすことができました。

あるカード会社様では、既存システムが拡張できずユーザーニーズにも対応不能な状況でした。しかし、全業務の基盤として EDW を構築したところ、クローズドループを実現する CRM や高度な審査業務など、業務そのもので活用し、ユーザーニーズにも柔軟に対応できるようになりました。

いずれのお客様も前述した 4つの特徴を備えています。EDW をベースとした全社レベルのビジネス・インテリジェンスは、まさに現在の企業の全業務プロセス、そして経営トップから現場まで業務を遂行するために必須になっています。

“アクティブ”のニーズと場面

しかし、情報活用はこれで完成形を迎えた訳ではありません。弊社のアンケートによると、85%の企業が今よりももっと新しい情報が必要であると答え、86%の企業がリアルタイムが重要であると回答しています。また、様々なニーズも挙がっており、それらは 3つに分類されます。

  1. データに関するニーズ : もっと新鮮なデータが欲しい。
  2. スピードに関するニーズ : 現場の業務で情報を活用するために、情報へのアクセスをもっと速くしたい。
  3. ビジネス・イベントに関するニーズ : まさに今ビジネスで起きていることを把握し、一刻も早い意思決定を下して行動を起こしたい。

これらのニーズの発生は、いずれもビジネスのスピードアップに対応するための自然な流れであり、業務の現場で DWH を頻繁に使い始めたための必然的な結果とも言えます。すべて、現場の意思決定および情報活用の加速化を求めています。我々はこれを“アクティブ(Active)”と呼びたいと思います。

“アクティブ”のニーズはどんな場面で発生するでしょうか。例えば、コンタクトセンターでエージェントが顧客と会話中、その場でその顧客に関する最新の情報を入手することができれば、“タイムリー”に顧客に合ったセールス活動ができます。反対に前日までの情報しかなかったら不適切な対応をしてしまうことになります。

最近頻繁に話題に上る製品不良の問題も同じです。いわゆるトレーサビリティですが、人命に関わることもあるため、最速の対応が必要です。そのためには、生産工程のすべてのデータを迅速に把握し、不良の原因を追究でき、かつどの顧客に届けられているか迅速に把握できなくてはなりません。

“アクティブ”のニーズは日常業務そのものなので、業界を問わず、様々な場面が思い浮かぶと思います。

“アクティブ・エンタープライズ・インテリジェンス”の価値

経営戦略立案や事業活動予測などは、前述したように EDW をベースとした全社レベルのビジネス・インテリジェンスの戦略的意思決定機能であり、ストラテジック・インテリジェンスと呼びます。リアルタイム性は必要ではありません。一方、日常の業務現場では、その場で起こっていることを即座に把握し、より迅速に意思決定する必要があります。これをオペレーショナル・インテリジェンスと呼び、現場力をアップさせる何千もの小さい意思決定をサポートする仕組みです。

これからの企業経営で競争優位に立つためには、これら 2つのインテリジェンスを“同時に”実現することが必要であり、このような BI のことを、我々は“アクティブ・エンタープライズ・インテリジェンス(Active Enterprise Intelligence、略して AEI)”と呼んでいます。

また、AEI は、EDW をベースとしていますが、そのような“アクティブ”な機能を持った EDW を特に“アクティブ・データウェアハウス(Active Data Warehouse、略して ADW)”と呼びます。ADW は EDW の 1拡張機能であり、AEI の技術的な全社統合基盤です。

さて、AEI の価値ですが、それは正に業務の“スピードアップ”です。図1 にあるように、ビジネス・イベント発生からデータ収集・分析結果提供を経て、アクションの実施までの時間が長くかかればかかる程、販売機会などのビジネスチャンスを失ったり、問題を大きくさせたりして、ビジネス価値を減らしてしまいます。

従って、最新データの収集を満足させるデータ・ローディングはリアルタイムに近くなければならず、分析時間・意思決定時間を最短にするためにはデータベースへの検索・分析スピードは最速でなければなりません。

図1: “アクティブ・エンタープライズ・インテリジェンス”の価値

AEI の活用例

業務現場の意思決定がスピードアップできれば、これまでできなかった新しいサービスを顧客に提供できるようになります。例えば、銀行の ATM で残高不足になった時、優良顧客であるかどうかその場で判断し、当座貸越を認めるかどうかの意思決定を自動的に行うことができるようになります。顧客にとっては大変価値のあるサービスです。

また、すでに実現しているのですが、自販機への飲料商品の配送業務において、自販機ごとの各商品数と効率的な配送ルートの自動計算の仕組みがあります。前日夜間、過去の実績やキャンペーン商品の情報を元に計算するのですが、翌朝セールスドライバーが出勤した時、その日の天候や街のイベントなどの情報を入力することにより、その場でその日に合わせた自動計算を再度行います。ドライバーはその指示に従って最適な配送業務を実施でき、収益の最大化とコストの最小化を実現しています。過去の各自販機に関するデータ(売上・配送ルート・ドライバー・商品など)すべてを EDW(ADW)に格納し、朝瞬時に自動計算する仕組みです。

また、コンチネンタル航空では、フライト・キャンセル発生時、振替輸送する顧客の選別に、瞬時に優良顧客を判断し、その顧客を優先して搭乗させています。通常であれば、搭乗口に並んだ順に案内するところですが、理想的な CRM を実現しています。これが実現できるのも、顧客とフライトに関するデータ(搭乗履歴・収益・マイレージ・機材・乗務員のスケジュールなど)がすべてニア・リアルタイムで EDW(ADW)に蓄積され、瞬時に分析・意思決定できる基盤ができ上がっているからです。

皆様のご企業ではいかがでしょうか。 ニーズは多々あると思います。是非、考えてみてください。

AEI を実現する仕組み

ここまでは主に、業務的な観点から“アクティブ”の必要性や価値などについて考察してきましたが、この節では AEI を実現する仕組みの概要を紹介します。まず、AEI への進化の過程を見ていきましょう。図2 にある通り、ステージ 1からステージ5 まであります。日本の企業の多くは、現在ステージ2 または3 にいます。先進的な企業でステージ4。ステージ5 の企業はまだほとんどありません。皆様のご企業はいかがでしょうか。もちろん、ステージ4 や 5 に至ることが目的ではなく、あくまでもビジネスで競争優位に立とうとすると自ずとステージは上がって行くということです。

図2: “AEI”への進化

さて、AEI の仕組みを図3 に表します。AEI の全社統合基盤である EDW(ADW)をベースに、ストラテジック・インテリジェンスとオペレーショナル・インテリジェンスがあります。AEI は EDW(ADW)と次の 6つの“アクティブ”要素から構成されています。

図3: “AEI”を実現する仕組み〜6つの“アクティブ”要素

<EDW を“アクティブ”化>

1. アクティブ・アクセス

EDW から第一線のユーザーをサポートする情報を 1〜5秒で取り出す機能です。

2. アクティブ・ロード

EDW に終日に渡ってデータをロードする機能です。1日に複数回、ニーズによって 1時間毎や 10分毎、またはほぼリアルタイムでデータをロードします。

3. アクティブ・イベント

ビジネス上の重要な変化であるイベントを自動的に検出し、ビジネスルールに従って応答が生成され行動を起こさせます。

<ADWインフラストラクチャ>

4. アクティブ・エンタープライズ統合

EDW をオペレーショナルなビジネス・プロセスおよびアプリケーションにシームレスに統合します。

5. アクティブ・ワークロード管理

戦略的クエリー・戦術的クエリー・イベント・データロードなどの混在する異なるワークロードを動的に管理し最適化する機能です。

6. アクティブ可用性

ハードウェア、ソフトウェアの機能停止に関係なく、ユーザーへのサービスを継続する機能です。デュアル・アクティブやホットスタンバイなどがあります。

AEI を実現できるのは Teradata だけ

AEI を実現するには、これら 6つの“アクティブ”要素をすべて提供できる DWH が必要です。Teradata だけがすべてを満足させることができます(業務系と AEI の関係を示す図4 参照)。

例えば、戦術的クエリーの発行やアクティブ・ロードの同時実行は、第3正規化されたデータモデルをそのまま非正規化せずに実装できなければ所定時間内に終了しないでしょう。通常の RDBMS はパフォーマンスを確保するために必ず非正規化しますが、そのため逆にオペレーショナル・インテリジェンスは実現できなくなります。Teradata は非正規化は必要なく、理想的な形でモデルを維持できます。

6つの“アクティブ”要素の中で最も重要なのは、アクティブ・ワークロード管理です。これが実現できて初めて、経営トップから現場の業務担当者までの全社員が、あらゆる業務で活用できるようになるからです。Teradata 以外のシステムでは当機能をサポートすることはできません。

図4: 業務系と“AEI”の関係

まとめ

以上、AEI のニーズ・価値・活用方法などを考察してきました。これからの企業経営では、これまでのストラテジック・インテリジェンスだけではなく、現場力を最大化するためのオペレーショナル・インテリジェンスの併用、すなわち AEI こそが、競争優位に立ち競合に打ち勝つために必要な戦略と仕組みを提供できるのだとご理解いただければ幸いです。

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