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ホーム > ソリューション > 製造・卸 > エンタープライズ・データウェアハウスの活用による製造業の業務変革

エンタープライズ・データウェアハウスの活用による
製造業の業務変革

東郷 穣
産業ソリューション事業部
インダストリーコンサルティング
グループ コンサルタント

昨年の金融危機に端を発する円高、原油価格の乱高下、先端ハイテク/ナノテク製品のコモディティ化等、わが国製造業の収益性を圧迫する要素は、販売、製造両面から強まる一方である。このような外部環境に左右されないような、いわゆる“筋肉質” の事業体制を構築する必要性については各製造業社いずれも異口同音に唱えられているが、一方で現状の業績情報の可視レベルでは困難といった声も伺っている。

そこで本稿では、エンタープライズ・データウェアハウスによる業績情報の可視化がもたら す効用について考察していきたい。

1.一般的製造業の現状

製造業の基本的なプロセスは「開発→調達→生産( 加工または組立て)→販売」に集約される。そして生業が “モノづくり” である限り、全て “モノ” という物理対象物の移動が伴う為に物流の概念が必須となる。

このプロセスにおいて、どのようなモノを開発すればよいか、どのような顧客をターゲットとして販売を仕掛ければよいか、どのサプライヤーから調達すれば安く良い部材が調達できるか、各企業とも独自の信念と方法論を持ち、その信念と方法論を戦略として舵取りを行う。しかし、収益性が圧迫されている今日、これまでと同様の事業戦略と舵取りではメシが食えないということは誰もがお気づきのところだ。つまり、物流を含めた上記プロセスを評価する指標や軸をもう一度見直すことの必要性に迫られている。やや大げさな言い方をすれば、わが国モノづくりの競争力の源泉である開発力と生産現場力を前面に押し出した「作れよ、さらば顧客は来たらん」という右肩上がりの時代は終焉を迎えたのである。

これまでの一般的な製造業は、製品別事業部制あるいはカンパニー制といった様に、製品を軸としてそのまま事業組織に当てはめてきた。そしてそれらの事業部、カンパニーを図1 のようなポートフォリオ上に分類し、ヒト、モノ、カネの経営リソースを配分する。

図1.

同様に、各事業部、カンパニーも自ら抱える製品群をポートフォリオ上に分類し、製品群に対するリソース配分を決定していく。このポートフォリオが現実的であるかどうかの議論はさておいて、すべてはこのポートフォリオから事業の戦略を構築する企業が多いのは事実である。

2.製造業が抱える情報活用の課題

ある企業を例に話を進めよう。その企業の製品は世界3拠点(日本・欧州・台湾)で生産され、西欧、東欧、中東、北中南米、アジアにわたる 32カ国の海外現法で仕上げ加工されている。各製品群の担当者(プロダクト・マネージャー)は、自身が担当する製品群の成長ロードマップを描き、開発部門と新製品開発スケジュールを打合せ、営業部門と販売戦術を検討し、生産技術部門、製造部門とコスト削減策や最適地生産案を議論し、財務部門と追加投資案(設備投資、資本参加、技術アライアンス、M&A 等)の稟議を起案し、承認・決裁を得る為に社内根回しに奔走する。文字通り、1円いや 1銭でも利益を拡大させる為に世界中を駆けずり回り、一年中時差ボケの生活を強いられているのである。

そのようなプロダクト・マネージャーの泣き所は時差ボケではなく、世界各地で取り組んでいる業務の進捗管理や予実分析が、細かい切り口で行えないところにある。少なくとも事業収益の核となる調達〜生産〜販売までのプロセスに関しては、様々な切り口でその進捗管理や予実差異の分析を行いたいのが実情だ。特に収益性については、販売した製品の顧客別の売上、粗利、売掛金回収etc はどうなっているのかを知りたいが、それらが分からない(見えない)。そのような状況下では、調達先のどこが悪いのかが分からず叩けるコストも叩けない、高い値段で大量購入してくれる優良顧客が実は金払いがよくない…といった整合性のない製品マネジメントに陥っている。その結果、毎月の〆後に事業部長に怒鳴られるのがオチである。事業部長はそのような製品群が積層された事業を管理している為、事業全体の戦略の整合性がとれなくなっており、毎月の役員会議に向けて戦々恐々としているだろう。そして更に、そのような事業やカンパニーが集まった全社の戦略の整合性ともなると、もはやどこから全社戦略の見直しに着手すべきか皆目見当がつかない、という事態になりかねない。

3. エンタープライズ・データウェアハウスがもたらす効用

ここでようやく弊社の提唱するエンタープライズ・データウェアハウスが、リングに登ることができる。製造業とは、時に浪花節的なモノづくり哲学が良くも悪くも効率性を遮断してしまう場合がある(筆者個人はそこに魅了され続けているが)。特に効率性という言葉は、製品機能や生産現場オペレーションを指す場合が表立ち、事業戦略や業務における意味味合いでの変革は、実際のところ多くの製造業が未着手であるのではいかと推測される。

さて、プロダクト・マネージャーにとって「見たい、知りたい」情報とは図2 のようなイメージである。

成長性の範囲については、外部データや定性データ、あるいは“担当者としての思い入れ”(本来最も重視したいのだが)という比較的コントロールし難い情報が中心である。一方で、収益性については既に社内に存在する業績情報をどのように加工すればよいか、が鍵となる。

弊社の提唱するエンタープライズ・データウェアハウスの特長をうまく活用すれば、このような業績情報の加工や意思決定に関わる切り口(可視角度)の多様化、細分化が可能となる。

その、当社のエンタープライズ・データウェアハウスの特長とは、

  1. 各業務プロセスで発生する伝票レベルの明細データを格納する
  2. それらの明細データを関連付け、一元化する
  3. それらの一元化データを高速に処理できるという点である。

各業務プロセスで発生するデータについては、恐らく基幹系システムを導入している企業ならば、一元化されてはいなくとも、どこかで発生しているデータである。販売系や財務系、SCM系といったように分離されてはいても、どこかには存在する。ただし、それらのデータが関連付け、共有されていなければ、プロダクト・マネージャーのように調達〜生産〜販売までを包括的に管理しなくてはならない社員にとっては、散在するデータを工場や海外現法の担当者に電話し、エクセルをメールで送ってもらい、さらに自ら手作業でエクセルを集計加工する必要がある。これでは常時時差ボケである上に、睡眠時間の確保すらままならない。それどころか、そもそも手作業である為、集計加工して出来上がってくる数字の精度は低くなる一方である。

4. 可視化による製造業の業務変革

しかしながら、弊社のエンタープライズ・データウェアハウスが導入されている企業は、全社に渡る明細データを一元化して格納し、フレキシブルな切り口と時間軸で業績情報を抽出している。そのような情報基盤の構築により、整合性のある打ち手の実行に活用して戴いている。例えば、購入価格を叩けるサプライヤーを見つけたり、代金回収期間が長い顧客の優先順位を下げたり、と収益性にインパクトの大きい早期の対策を可能にした。結果として、短期間で事業ポートフォリオ上の製品群のポジションが変わり、事業全体の戦略とリソースの配分も適切なものに変化させることができる。

前述の企業においてこのような情報基盤が構築されていたら、と悔やまれる場面の 1つに、やはり投資立案が上げられる。グローバルでのモバイル機器市場で、あるプロダクト・マネージャーの担当する製品群以外の他事業部の製品も多数売れていたが、彼の所属する事業部内では相対的に収益性が高くなかった。つまり他製品を含めたモバイル機器市場という軸では収益性が高かったのだ。当然、この市場は成長市場であり、現行の生産能力では数年後には需要過多に陥ることは自明であった。しかし、管轄される事業部では、彼自身の担当製品群は伸ばす市場ではなかった為に、追加投資が棄却されることとなった。もしこれが市場軸でポートフォリオを形成していれば事態は違ったかもしれない。市場軸で他事業部製品の収益性が可視化できていないが故に、適切な投資が行えなかった典型的な例である。

一元化された各プロセスのデータを高速で集計加工が可能であれば、何もプロダクト・マネージャーだけではなく、経営幹部から製造・販売の前線社員にまでデータ活用による業務と意思決定の効率化が実現される。当然経営幹部層と前線社員とでは見るデータは異なるだろう。しかし、一元化データをベースに指標とその管理範囲を組み立てればば、同じデータソースから発生する整合性のとれた指標をもとに全社全員が業務に取り組むことになる。当然、プロダクト・マネージャーもその動き方、業務の取り組み方が大きく変わってくるだろう。

5. 最後に

本稿はあくまで業務管理における効果についてしたためたが、当社の製造業向けのソリューションとしては更に SCM分野や、あるいはエンタープライズ・データ・ウェアハウス構想策定のお手伝い等もさせて戴いている。これについては、また別の機会に大いに語らせて戴きたい。

Copyright (C) Teradata Magazine 日本版 - Vol.18 2009年

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