ホーム > ソリューション> 製造・卸 > 分散された情報基盤をエンタープライズ・インテリジェンスへ(1)
藤沢 秀行
産業ソリューション事業部
シニアコンサルタント
今日、製造業を取り巻くビジネス環境は著しく変化していますが、日本企業の対応の成果は目覚しく、ここ数年において見事に業績は回復し、投資意欲も増加の傾向にあるようです。例えば、環境の変化としては、低コストを武器にした中国・アジア企業の台頭によるコスト競争、製品のハイテク化や高付加価値化、市場での競争力確保のための製品やサービス差別化への要求、製品ライフサイクルの短縮化、市場拡大を目指した更なる市場のグローバル化などがあります。それに対して企業は、中国を初めとするアジアへの主要生産拠点の移転、新製品開発、設計変更プロセス改善への取り組み、開発・製造・物流サイクルタイムの短縮化、グローバル市場エリアごとの製販体制の確立や、これらに同期した期間業務および計画業務などの IT面での迅速な対応に取り組んできました。しかし、目覚ましい成果の反面、新たな課題も発生しています。需給のアンバランスによる過剰な在庫や納入の逼迫、品質の低下によるワランティ費用、リコール費用の増加などです。さらに RoHS指令や J-SOX法などの法令遵守への対応も差し迫った課題として挙げられます。
日々の業務で発生する課題は、まず課題の認識から始まり、課題を引き起こした要因の追求、課題による影響の把握、課題を改善するアクションの決定、実施されたアクションの進捗・結果の管理といったプロセスを経て改善されていきます。しかし、個々のステップにおける状況判断や意思決定には、都度正確な情報収集やレポート生成が必要で、これにかなりの時間と労力を投じることになります。課題によっては、特定の業務機能を改善すれば解決するといった単純なものではなく、いくつかの業務、組織、要因と関連する場合も少なくありません。ひとつの業務の改善が別の業務の改悪の要因となることもあるため、全体最適を意識した対応と管理が必要になります。

図1 は個々の業務最適化を目指してシステムを導入してきた結果、表面化してきた問題を示しています。倉庫管理、ERP、物流/出荷などの個々の業務機能を支援するアプリケーションは、特定の業務の効率化あるいは分析を目的としていることから、他のアプ リケーションやプロセスと連携する柔軟性を備えていません。データマートなどの情報系の仕組みにより目的ごとの情報提供は実現されますが、課題ごとに都度仕組みが構築されることになり、結果として多数のデータマートが散在し、必要なデータの所在がわかりづらいなどの新たな課題も発生します。また、取り込まれるデータの意味、業務ルールに対する解釈も一意では無いため、エンドユーザーによって異なった解釈を生みやすくなってしまいます。そして、データ自体も集約されたケースが多く、明細が必要な場合は、都度基幹系のシステムを参照するような運用になりがちです。
仮に現行のデータマートに代表される情報系の仕組みが、「全社で一元的に統合された情報基盤」であるエンタープライズ・データウェアハウス(EDW)に統合されればどうでしょう。これは個々のデータマートで管理しているような特定の業務、特定の目的に従ってデータを管理するといったものではなく、データを物理的に一つのサーバーに統合したというだけの意味でもありません。データはあくまで品目、社内組織、取引先、場所、イベント情報などのサブジェクト(主題)単位にデータ間の整合性を意識しながら、統一された項目の意味定義や業務ルールに基づいて管理され、データを取り出す時点で目的に応じて集計、計算されます。業務で発生したデータは、素データの単位で予め取り決めたルールに基づいた変換処理を通して、日次サイクルで(ものによっては発生の都度、非同期サイクルで) 情報系の仕組みに自動で取り込まれ、履歴的に管理されていきます。また、業務の追加や変更がモデルへ与える影響は極小化され、一旦格納されたデータは後々まで活用できます。エンドユーザーはシステム固有の専門的な知識が不要で、必要な都度、様々な情報要求に対応することが可能となります。
Copyright (C) Teradata Magazine - Vol.11 2006