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エンタープライズ・リスクマネジメントを支える
エンタープライズ・リスクデータウェアハウス

バーゼルIIをきっかけに、その先のERMを目指す米銀で
エンタープライズ・リスクデータウェアハウスを構築中

現在、複数の米国の上位銀行で「エンタープライズ・リスクデータウェアハウス」の導入が進められています。これには既存のデータウェアハウスにリスク関連のデータを大幅増強する取り組みと、今回新たに全社データベースとしてリスクデータウェアハウスを構築するケースがあります。例えば、バンクオブアメリカは既存のデータウェアハウスを大幅に拡張することを公表しました。現時点ではどの銀行についてもまだ詳しい内容を公表できないのですが、リスクデータウェアハウスの規模は Teradata製品を採用した銀行の場合、いずれも数十テラバイト規模になる予定です。
この時期に米銀がリスクデータウェアハウスの構築に着手した大きな理由はバーゼルIIへの対応で、これは邦銀と同じです。しかしバーゼルIIへの対応にしてはずいぶん大きなデータベースを構築しようとしているように見えます。これは単にバーゼルIIで求められている数値を得るためだけを意図しているのではなく、実はその先の「エンタープライズ・リスクマネジメント(ERM)」構想を踏まえた「エンタープライズ・リスクデータウェアハウス」の構築という意味があります。

ERMの狙い − リスクデータと会計データ、顧客統合のシナジーでよりよい経営判断を

ERM はバーゼルIIのためなどに収集した多様な素材データや、計算ロジックで算出したデフォルト確率などのリスク関連データを、もともとの制度案件への対応としての意味あいを超えて、更なる企業財務業績の向上に寄与する情報源として徹底的に活用しようとする概念と行為を意味します。 よってバーゼル?Uのように手法や内容が具体的に定義されているものではなく、それぞれの金融機関が独自に工夫し知恵を絞った取り組みを考えています。そのため実際の内容は、いわゆる金融機関の「リスク管理」担当者が現在手がけているような領域とは趣の異なるものが多々見受けられます。例として、1. リレーションシップエクスポージャー管理 2. 融資ポートフォリオの改善 3. 所要資本の改善、などがあり以下に1. 2.の概要を紹介します。

リレーションシップエクスポージャー管理
一言でいうと、手間暇かけて顧客リレーションシップをとることが、本当に的確なリスク把握や回収の改善に貢献しているのかを評価して、本当にリスク調整後収益向上に効くリレーションシップ戦略を組み立てることと、それと同時に日常のリレーションシップを通じて入手する顧客情報や業界情報、その企業の決済データの変化を絶えずウォッチして動的なリスク変動把握に基づいたタイムリーなアクションの実現を目指すものです。
狙いは適正なプライシングによる収益向上と、延滞や損失の削減、回収効率の向上にあります。これを実現するために顧客ごとのデフォルト予測値の時系列推移とその間に発生したリレーションシップに関するデータ、そしてトランザクションデータを統合して見ることが必要になり、従来はかなり困難な作業でした。

融資ポートフォリオの改善
言葉上は特に目新しくありませんが、より細かな事業セグメント単位でリスクの集中を探索し、適切なリスクポートフォリオ運営方針を導こうというものです。高度な業種間連関など加味したリスク量シミュレーター(VaR)を使う場合には、その前段階の検討作業と位置づけられます。
商品単位やその中区分単位でのリスク調整後収益はどうなっているか。どのような業種(産業)リスク、通貨リスク、プライシングリスクに晒されているか。現在のポートフォリオのリスク集中状況を探索します。これは一見単純な作業ですが、切り口を可変にするために素データを扱う必要があるので従来はコンピュータの検索とデータ保持量の面でかなり大変な仕事でした。しかしリスクと顧客や通貨などの関連データ全てが統合されかつ高速なデータハンドリング能力を備えたリスクデータウェアハウスの導入によって、専用に分析システムを用意しなくても自由な切り口でリスクの集中係数を求めることができるようになったことで改めて着目されています。

アプリケーション・データマートではなく統合リスクデータウェアハウスである理由

ERM のアーキテクチャーは下図に示すようなもので、その中核になるエンタープライズ・リスクデータウェアハウスはバーゼルIIなどで必要な素材データを一元的に収集し、各種計算アプリケーションが要求するフォーマットでデータを配信、またそれらの計算アプリケーションが算出した結果データも一元的に収集して他の分析アプリケーションやレポート作成アプリケーションに配信する、という機能を提供します。

バーゼルII対応のためにはさまざまなデータとサブシステムが関係します。デフォルト確率予測のパラメータを推定したり、その推定パラメータを用いたデフォルト率の計算、さらには信用VaRなどのシミュレーションエンジンを搭載したアプリケーション、またオペレーショナルリスクではリスクを算定する基礎となる事務の素データなど、それぞれのツールやアプリケーションごとに必要なデータ項目やフォーマットが定められています。また、各計算エンジンやアプリケーションのアウトプットは通常そのアプリケーションが備えているレポートやデータの範囲で活用されることになります。このように、もともとは各アプリケーションはそれぞれの目的に応じてレポートやデータを分かり易い形で提供することが使命ですが、これらを相互に隔離したままにするのではなく、それぞれが要求するデータ(インプット)とアウトプットを横断的に相互交流させることで次のメリットが得られます。

  1. ITの視点:
    リスク関連の各種アプリケーションソフトウェアに供給するデータを一元管理することによってデータの二重持ちを削減できます。また、データフォーマットの変換処理も減らせることによってITコストを削減できます。
  2. ERMの実現:
    先に紹介したようにリスクに関する各サブシステムが生成するデータを素材にして、新たなビジネス洞察力の源泉として財務パフォーマンスの改善を実現します。

このように米銀ではバーゼルIIをひとつの契機として、全社ベースでの顧客、口座明細単位でのリスクに関するデータ統合に着手し、新たな財務改善の目のつけどころとアクションを導く道具としてリスクデータを活用しようとしています。

Teradata がこのような米国銀行のリスクデータウェアハウスのプラットフォームとして採用されている理由は、1. 超並列処理による極めて高速な検索性能と拡張性 2. 並列データロード処理による高速なデータロード 3. Teradata が提供する論理データモデル FS-LDM によってリスクデータウェアハウスの設計時間、工数が短縮される、という点が高く評価されたからです。

この記事は、『Financial Information Technology』 (2006年 新春号)に掲載されたものです。

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