ホーム > 導入事例 > 海外事例一覧 > FORD Motor Company 「FORD社のサプライチェーン戦略」
テクノロジーの進化がコスト削減をトップギアで加速

100年前、Henry Fordは夢を実現しました。11人の出資者とともに、Fordはわずか28,000ドルの資本金でFord
Motor Company(以下、Ford社)を設立したのです。Ford社が第1号の自動車を売り出すまでに1ヵ月余りかかりましたが、T型フォードは発売から19年間で1,500万台という驚異的な販売実績を納めました。まさに20世紀を代表する車となったのです。
ミシガン州ディアボーンを本拠地とするFord社は、現在、世界第2位の自動車メーカーとしてFortune 500にランクされます。2002年度におけるFord社の全世界車両販売台数は、679万3000台、売上は16.3億ドルに上りました。
Ford社の主要事業は、自動車と金融サービスです。自動車事業では、Ford、Lincoln、Jaguar、Aston Martin、Mercury、Volvoなどの有名ブランドの乗用車、トラック、バン、スポーツ仕様車を扱い、ディーラーを通じて販売しています。金融サービス事業では、自動車と機器のレンタルを行っているHertz CorporationとFord Credit Corporationがあり、世界最大の自動車ローン会社のFord Credit Corporationは、36ヵ国におよぶ1,100万人以上の消費者と12,500店以上のディーラーに融資を提供しています。
Ford社が1993年に初めてTeradataにコンタクトしてきたとき、その主な目的はコストの削減にありました。Ford社担当チームを率いるTeradataセールスディレクターのJim Aldrichは当時を振り返って次のように話しています。「Ford社は、メインフレームのアップグレードに代わるコスト効率のよい選択肢を探した結果Teradataを採用しました。メインフレームのアプリケーションをTeradataに移すことで、Ford社はコスト削減を実現しました」。それ以来、TeradataはFord社の自動車と金融サービスの両事業で使用される分析ソリューション環境を展開する基盤となっています。
Ford Credit Corporationの最大の課題は応答時間でした。そこで同社は、1995年
マーケティングの改善と企業体質の強化、特に自動車リース/ローン収益率、利率設定および支店収益率の改善に向けてTeradataの積極的な利用を開始しました。
「応答時間とデータ量が、Ford社の意思決定支援・支店収益率分析システムで使用されていたメインフレーム・システムでは対応できなかったのです」 とAldrichは話しています。Ford Credit Corporationの支店は、重要情報を入手するのに以前は最大10日も要していたのが、Teradataの導入後、わずか2〜3日中に入手できるようになりました。アクセス時間の短縮により、同社は支店経営および景気動向への対応を改善することができたのです。
「1997年、Ford社のCustomer Services(顧客サービス部門)がエンタープライズ・データウエアハウスにTeradataを採用したため、私たちはFord社の車の部品在庫管理ウエアハウスの構築、各種の顧客サービス関連データおよびアプリケーションの実装に着手しました」とAldrichは話しています。
1999年、Ford社は再びTeradataに支援を求めました。今度は'Customer Knowledge(顧客ナレッジ)システム'プロジェクトの実施が目的でした。このプロジェクトの導入によりFord社のマーケティングキャンペーン数は、1999年の約40回から2003年には750回を超えるまでになりました。また、Teradataは新車出荷状況追跡用オーダー・フルフィルメント(注文処理)メトリックス、重複や誤りの発見につながる保証請求分析など、他の様々なアプリケーションの基盤にもなっていて、その中でこれらアプリケーションのすべてがFord社の当初の目標であるコスト削減の達成に寄与しています。最も目覚しい効果が現れたのは、北米のカーディーラーにアフターマーケット部品を供給するFord PS&L(Parts, Service and Logistics:部品、サービスとロジステック)部門の在庫最適化でした。
アフターマーケット部品は一般的な補充部品や保証期間中の修理用部品として使用され、バンパーやスパークプラグからガスケットやオイルフィルターに至るあらゆる部品、つまり、実質的には自動車に使われるすべての部品を扱います。
Ford社には旧サプライチェーン・システムに在庫を予測する機能、サプライチェーン全体の資材状況の可視性、また問題発生時の警報機能が欠けていたことに起因する解決を迫られている問題がいくつかありました。そして、これらの問題をさらに複雑にしていたのが、Ford社の企業規模と毎日出荷される部品数でした。Ford社は発売から35年間に渡って車をサポートし、2,000の部品業者を有しているため、これから想定される部品数は約22万点ないし25万点にも上ります。これに加えておよそ7,000店のディーラーを考慮に入れると、Ford社が本当に必要としていたものは、サプライ&ディストリビューションチェーン全体の可視化、モニタリングおよび事前警報機能を提供するソリューションであったことが明らかです。
通常でも予約受注残の処理は、その件数に拘らず骨の折れる仕事です。予約受注残の部品がディーラーに揃っていなければ、社内で発注しなければならなりません。TeradataのCenter of Excellence for Supply Chain Intelligenceを率いるJerry Hillは次のように説明しています。「Teradata導入前は、システムで予約受注残を処理するのに平均以上の時間がかかっていました。予約受注残は、顧客満足度の観点からだけでなく費用の点でも、Ford社に損失を招きます」
予約受注残を処理するためには、Ford社は早期出荷の割増金だけでなく超過勤務手当も支払う必要があり、倉庫が部品注文に応じられないために受けた注文を別の倉庫に回す場合、Ford社は紹介手数料の支払いを求められるケースもよくありました。このような場合、特殊な(通常は、手作業の)取扱費用と追加の輸送費用がかかることになり、予約受注残を処理した倉庫の在庫を減らすことで間接的に悪影響を生じさせることにもなりかねません。
しかし、金銭的な損失は問題のほんの一面にすぎませんでした。「顧客が予測している期間内に車を納品できないことこそが、Ford 社にとって極めて大きな損失となりました」とHillは話します。
PS&Lでは、午前中に'予約受注残が多すぎる'という問題が出てくると、午後には'在庫が多すぎる'という別の問題が持ち上がるという状況が起きていました。Ford社は納品率を向上しなければなりませんでしたが、在庫レベルの引下げも課題でした。過剰な在庫の仕入と維持が会社に金銭的損失を招いていただけでなく、サプライチェーン全体にボトルネックを生じさせていたためです。
Fordのサービスレベルは即座に改善され始めた。たった12ヶ月で予約受注残を20%削減、在庫レベルを20%削減、サイクルタイムを30%削減した。
Ford社は、過去の販売データ、現役として利用されている車両数などの要素を基に顧客の部品需要をある程度予測することができます。これにより、特定時点にどの部品の在庫が必要かを大雑把に知ることはできますが、全体を把握することはできません。「Ford社は、今後の事故、異常気象による問題などの発生件数を予測できません。予測不可能な事象により、Ford社は100年間も部品需要の予測努力を積み重ねてきているにもかかわらず、その予測は不完全な可視性しか提供できなかったのです」とHillは話します。
Teradataプロジェクトの開始当初、デトロイトにあるFord社の主力配送センターには毎日何百台もの配送トラックが集結していました。荷積み中のものもあれば、荷降し中のものもあり、ただ作業の順番を待っているだけのものもありました。システムは単純明快で、最初に入ってきたトラックが最初に荷降しされるという、いわば'先入先出方式'を採用し、トラックの荷降し、在庫の仕入、そして注文への対応に一定の時間を見込んでいました。「だれもが仕事をきっちり行なえば、システムは顧客の需要を満たせるだけの十分な在庫を仕入れることができます。従って、すべての顧客は注文品を予定通り入手できるはずである、というのが基本的な考え方であったわけです」とHillは話します。
しかしながら、デンバーでの吹雪の発生、当初の予想を上回る部品需要など不測の要因から問題が生じました。
このような不測の要因では、前述の'先入先出方式'には欠点がありました。Ford社は実際にトラックの中をのぞいて積荷の重要度を確かめることができないためです。

TeradataはFord社から難しい注文を受けました。「Ford社から、顧客サービスの管理と在庫水準の管理のいずれも犠牲にすることなく、その両方の管理を実現できるアプリケーション、ツールが欲しいとの要望を受けました」とHillは話します。
Ford社は他の経営分野ですでにTeradataを使用し、大きな成功を収めていました。「Ford社が次に必要としたのは、アフターマーケット部品分野で使われていた4 〜5つの異なった業務系システムのシングルビュー、すなわち、データの一元化でした。Ford社は、これを実現する可能性をTeradata Supply Chain Intelligence(サプライチェーン・インテリジェンス:Teradata SCI )ソリューションに見出したのです」とAldrichは説明しています。
Teradata SCIソリューションは ―Ford社内では、Inventory Monitoring Alert System(IMAS:在庫監視警報システム)として知られている ―2001年1月に本番稼動に入り、すぐに導入効果を見せ始めました。「トラックの積荷を知り、その重要度を把握することができれば、最も重要な積荷を最初に降ろすためにトラックの荷降しの順序を変更できるはずです。それこそ、正にTeradataで構築したシステムで行なっていることなのです。Teradataシステムは、積荷を調べ、注文率とサプライチェーンの状態-現在の在庫量、在庫不足時における新たな在庫仕入の所要日数など― に基づいて顧客に対するその積荷の重要度をチェックするわけです」とHillは話します。
Teradataウエアハウスの活用により、Ford社は部品番号や事業所レベルに始まりサプライチェーン全体のあらゆる面で事業経営の効率化を図ることが可能となり、積荷の重要度に応じてどのトラックの荷降しをしたら良いかを優先順位付けできることから、Ford社のサービスレベルはすぐに改善を見せ始めました。
最終成果は?わずか12ヵ月で、予約受注残が20%削減し、安全とされる在庫水準が20%削減し、サイクルタイムが30%削減されました。
Ford社のIMASがもたらした最大の効果の1つは、サプライチェーン内の異変が以前と同じ問題を引き起こさないようになったことであることに付け加えて、Hillは次のように語っています。「このような取引と計算の副産物として、Ford社にそのプロセス内における異変の所在を教えてくれる分析機能が得られました」
事実、Ford社は全く予期しない異変を発見しました。「特定の時点に4,500台のトラックが様々な事業所間で在庫品を移動している。分析の結果、トラックの内10%はいつも遅れていることが判明し、また一部のトラックは'空車で帰るのを嫌って、Ford事業所を通り過ぎて駐車し、確認や返品指示を待っていることが分かりました」
その結果、Ford社は"待機していた"運送業者に満載の料金を払っていたことになります。「このことは、データウエアハウスを使うとすぐに判明し、問題の運送業者を割出すことができました。Ford社はプロセスからこのような異変要因を除去しました。これを何度も行なえば、サイクルタイムを30%削減できます」とHillは話しています。
Fordは他のテクノロジーの使用を試みたが、非定型的レポートですべてのサプライチェーンを再生成するのに12〜14時間を要した。ところが、今は45分で完了する。
毎日稼動しているIMASは、Ford社内の複数のソースシステムからデータを抽出し、在庫を計算し、社内外のほぼ450名のユーザーに警報やレポートを送出します。「Ford社は、現在IMAS とTeradata SCIアプリケーションで行なっていることを他のテクノロジーで行なおうとしたことがありましたが、アドホックなレポートの作成でサプライチェーン全体を再生成するのに12〜14時間もかかるという問題が生じました。これは、今なら45分で完了できます」とAldrichは話しています。
Teradata SCIは、Ford社のような複雑な仕組みを有する企業のコスト削減と経営効率改善を目的として開発されたソリューションであり、Ford社はその強力なソリューションを有効に活用することができました。 「Ford社のユーザーが容易にアクセスできる分析形態を確立するため、TeradataはFord社と緊密に協力し、毎年ウエアハウスを大幅に拡張してきました。Ford社のウエアハウスは、拡張しても採算が取れる業務で利用されているので、そこに実装されるアプリケーションがどんどん増えています」とAldrichは語っています。現在、Ford社はアフターマーケット部品ビジネスに加え、包装および塗装(部品塗装)センターでもIMASを活用しています。 創立100年を迎えたFord社は、高い業績基準を継続的に設定・達成し、自動車業界で引き続き成功を収めています。金融と製造の両事業部門の合理化により、Ford社は金融業務の改善とサプライチェーンのあらゆる側面のモニタリングを実現し、事業経営の効率化だけでなく総合的な顧客満足の向上にもつながっています。 このような前向きの姿勢で、Ford社はこれからの100年間にその並外れた製品ラインと強固な経営基盤をさらに強化していこうとしています。
Copyright (C) Teradata Magazine - June 2004