ホーム > 情報ライブラリー > データウェアハウス入門 > データウェアハウスの中身と効用 > 「第1回」厳しい経済状況でも商談が進むデータウェアハウスとは何か
安達 敏光 (あだち としみつ)
ビジネス・ソリューション&コンサルティング統括部
ビジネス・ソリューション第一部 シニア・コンサルタント
筆者の周りでデータウェアハウスの商談は今年に入っても着実に進んでいます。
Web系の世界に比べてデータウェアハウスは IT の中でもかなり地味な分野ですが、最近急に厳しくなった企業業績を背景にして健闘しているのです。
例えば製造業ではこれまで以上に在庫を減らし、あるいは物流の効率を上げてコストを削減するなどの目的でデータウェアハウスを採用しています。
こう言うと、生産管理システムや在庫管理システム、物流管理システムのことではないだろうか、とお思いかもしれません。実はそのような既存の業務システムとは切り口が違います。
データウェアハウスという言葉を直訳すれば「データの倉庫」で、データを保管しておくデータベースのことを意味する言葉です。でも、個人が使っているパソコンのディスクはふつうデータウェアハウスとは呼びません。
筆者が従事しているデータベース業界でデータウェアハウスというと、企業等の組織・団体が導入する全社的規模のデータベースのことを意味します。
使うデータベース管理ソフトの種類は何でも構いませんが、大企業で構築されているデータウェアハウスは、商用リレーショナルデータベース製品が使われることがほとんどです。
データウェアハウスは、基幹系のシステムとは別に構築されるデータベースです。基幹系を含む複数の業務システムからデータを集めて格納して、人間がそれらのデータを用いて意思決定できる環境を提供するのが、データウェアハウスです。
なぜ、データウェアハウスを基幹系とは別に構築しなくてはならないかというと、コンピュータの能力の問題です。データウェアハウスは、人間が意思決定を行うために必要な「分析」という処理を高速に行わなくてはなりません。このような処理は通常、基幹系業務システムに要求される要件とは性質が異なるものなので、実際のデータウェアハウスは基幹系業務処理システムとは別に専用のコンピュータを導入することになります。
データベースだけ用意しても、そのままでは人間の目で中身を見ることができないので、通常はデータを可視化や分析するためのアプリケーションソフトを同時に導入することになります。
このようなソフトは BI(Business Intelligence)ツールという製品カテゴリ名で呼ばれ、データウェアハウスとは切り離すことのできないツールです。
BIツールには業種や目的を問わず汎用的に使える汎用BIツール製品と、生産管理、顧客管理など特定の業務に特化した専用アプリケーションがあります。BIツールにも、さまざまな製品が存在します。
データウェアハウスは既存の業務システム群それぞれが持つ散在したデータを全社規模のデータベースに「統合」して、全社レベルでの業務横断的・組織横断的な情報活用ができるようにします。
この機能によって、未だ残されていた業務改善領域へのアプローチを可能にするのです。例えば、これまで各工場や物流拠点から販社にいたるまで、それぞれの部署、拠点単位に工夫していた在庫や物流効率化の取り組みを、データウェアハウスを使った情報システムを導入することによって、全社、さらには関連会社を含めた全体の動きを把握した上での最適化ができるようになります。
「大男総身に知恵が回りかね」ではありませんが、大企業の場合、自分が携わっている工程の前後の在庫がどうなっているかなんていうのは通常肉眼で見ることができませんし、データを相互融通することも普通はできていません。
このように、誰も全体を見ていない、担当者も周囲が見えていない、という状態で企業全体としてギリギリまで追及した効率運転(オペレーション)を実現するのは難しいことがご想像いただけると思います。
データウェアハウスを導入すると、今までできていなかった「全体最適」というビジネス上のメリットを得ることができます。
このことが、経済環境の悪化している状況下で企業がデータウェアハウスを検討する理由の一つになっています。
業務システムの構成は企業によって違ってきますが、このようなイメージになります。
次回は、データベースとデータウェアハウスの違いやデータウェアハウスが備えるべき性質について、紹介する予定です。