ホーム > ライブラリー > マーケティング・アナリティクス > 顧客戦略策定のためのマーケティング・ワークブック > 調査項目D: 商品/サービス開発
山本 泰史
マーケティング統括部
マーケティング部 スペシャリスト
商品/サービス開発のプロセスと主管部門、そして次回触れていくビジネスライン/チャネルプロセスおよび主管部門は、マーケティング活動/マーケティング部門が緊密に連携をとり、こまめにコミュニケーションをとるべき部門です。ビジネスライン/チャネルは顧客と日々接触している機能であり、マーケティングメッセージはここを通じて顧客へと流れます。そしてマーケティングメッセージのコアとなる、自社が購入させたい商品やサービスは、商品/サービス開発のプロセス、もしくは部門によって生成されるものです。また顧客からのフィードバックを商品やサービスに反映させる場合には、このルートを使って情報が逆流し、顧客ニーズに基づいた商品/サービス開発のトリガーとなります。
なお、ここでは 3つの機能として商品/サービス開発、マーケティング、ビジネスライン/チャネルに分け、それぞれの主管部門として 3つの部門を分けていますが、実際にはそれぞれの企業によって異なる役割分担、組織構造をしていることと思います。例えば商品/サービス開発とマーケティングが同一部門に存在している、ビジネスラインごとに商品/サービス開発やマーケティング機能が分かれて存在している、マーケティング部門がインターネットチャネルを管轄している...等々です。必要に応じて「組織」から「機能」を切り離してお考え下さい。
商品やサービスの企画立案段階においては、立案段階において用意されたアイデアが、様々な観点から商品/サービスとして展開すべきものであるかどうか検証されなければなりません。企業の方向性と合致しているかどうか、リソース(コスト、投資)と対象市場(顧客数、ビジネス機会の総量と総額)のバランス、自社の他商品/サービスや競合から見た相対的位置づけ、またこれ以外の外部与件が考慮に入れられる必要があり、これらが整理されている必要があります。これらの多くはビジネスプランや展開/回収計画といった名前でドキュメント化され、関連する部門間で共有され、合意される必要があります。
続いて商品/サービスの市場への投入段階においては、市場に対するメッセージが明確化される必要があります。通常これは事実/属性(Fact/Attribute)、機能(Function)、便益(Benefit)の形式で事前整理され、これを元にマーケティング媒体レベルに露出するメッセージが定義されます。また、自社の他商品/サービスや競合から見た位置づけも考慮され、メッセージの方向付けがなされなければなりません。
最後に、改善とライフサイクル・エンドのコントロールです。競合商品の投入や、外部与件の変化、市場自体の変容(飽和、成熟等)が検知できた段階、もしくは一定のサイクル(例えば毎年 xx月等)で、当初設定した商品/サービスが引き続き魅力を放っているかを確かめる必要があります。またマーケティング、販売、デリバリーによって計画段階とは勝手が違っていた点も発見できることでしょう。これらに基づいて商品/サービスの改善が必要となります。価格を見直したり、パッケージ体系を見直したり、新規の機能を追加したり、逆に無用と思える機能をドロップしたりすることによって、市場とのフィットを目論み、継続的に調整することが必要です。またそれによる効果と、追加投入コストを比較して意義を見出せないのであれば、ライフサイクル・エンドとして当該商品/サービスの終了方法を検討していく必要があります。
商品/サービスの企画、展開時の能力を測る項目としては、主に 2つの評価項目が挙げられます。1つは投下コスト(金額、人員、施設等)と、得られる収入、そしてコストを収入から差し引いて算出される利益がどの程度得られるかという観点。そしてもう 1つは、市場投入までのスピードです。先駆者として市場投入する場合も、フォロアーとして市場投入する場合も、起案から投入までのスピードが回収期間を早め、ビジネス機会の数量を増加させます。業界や商品によっては生産や技術開発等、どうにもならない投入までのリードタイムは存在しますが、必要な情報を集めて吟味する能力、それらをベースに商品/サービスの位置づけを明確化し、メッセージを組み立てる能力(精度とスピード)は、その企業の競争力に大きな影響を与えることになります。
マーケティング部門、そしてこれは商品/サービスの開発部門も同様ですが、互いの情報共有が必要です。マーケティング部門は商品/サービス開発部門が培ってきた、その商品/サービスが有するコンテクストを理解する必要がありますし、商品/サービス部門は反対に、今の市場、今の顧客が有するコンテクストを理解する必要があります。この相互理解があり、お互いが展望を持てる着地点が存在することが「商品/サービスとマーケティングが有機的に結合する」という結果に行き着くための重要なポイントと言えます。そのためには、商品/サービスの 3つの段階 - 企画立案、展開、そして改善のそれぞれにおいてコミュニケーションがとられなければなりません。マーケティング部門からはビジネス機会の内容と総量(金額規模、重要度)が伝えられ、商品/サービス部門からは商品/サービスの位置づけ、価値、背景、差別化要素といった観点が伝えられている必要があります。そしてもちろん、それらがマーケティング活動と商品/サービス開発活動に反映される必要があるのです。
非常に貴重な素材で仕上げたカシミアのセーターも、その情報が無ければマーケティングメッセージとしては単なる「セーター」で終わってしまい、結果消費者が感じる価値も単なる「セーター」で終わってしまいます。ビジネス機会(顧客の要請)が「上質な肌触りと光沢を持った、高級感溢れるセーター」であるにも関わらず、マーケティング部門がそれを単なる「セーター」と狭義にしか解釈できなければ、商品/サービス開発部門はジェネリックな「セーター」としてしか理解し得ません。どの程度密接に情報共有がなされており、その結果相互理解がなされているかが、ここでの重要なポイントとなります。
「調査項目D: 商品/サービス開発」に関するワークシート (PDFファイル 23KB)
次回は「調査項目E: ビジネスラインおよびチャネル展開」をご紹介します。
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