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顧客戦略策定のための

マーケティング・ワークブック

山本 泰史
マーケティング統括部
マーケティング部 スペシャリスト

調査項目B: 市場および顧客

今回と次の回では、企業の外部環境に関する知覚/認識状況についての整理、調査を行います。この章ではその中でも特に重要となる「外部」、顧客とその集合体である市場について概観します。企業の方向性はこれら外部環境に影響を受け、時には修正を余儀なくされます。また、外部環境を無視した方向性は独りよがりであり、外部環境という制約条件の中で最大限の収益を導き出すため、方向付けが為されるべきです。

セグメンテーション

自社がビジネスを遂行していく上で、売上/収入の源泉となるのは顧客です。この顧客には既存顧客と見込み顧客の両方、つまり過去と将来の売上に関わる顧客群が全て含まれます。自社から見て顧客は他者であり、外部です。独立し、独自の意思を持った存在であり、彼等/彼女等の全てを自社がコントロールできる訳ではありません。また顧客に関する全ての情報やニーズを把握している訳でもありません。それゆえ、自社の売上を確定付ける(自社の売上に決定的な影響を与えうる)存在であるにも関わらず、一定の不確実性を内包している存在であると言えます。従って、顧客を理解する努力はその不確実性を最小化する取り組みでもあり、多くの企業にとって成否を決定付ける指標である「売上/収入」の不確実性を最小化するために不可欠な行為であると言えます。

顧客を理解する際、それぞれの顧客 1人1人について理解を得ることは効率的ではありません。一方で全ての顧客は似たようなものであると定義付けてしまうことも乱暴な行為です。効率的でありながら、そのコントラスト、違いを明確にする場合、その中庸策を選択することになります。即ち、顧客を管理可能な数に分類することです。これを単に英語に置き換えたのがセグメンテーションですが、この分類の仕方が自社のビジネスを定義する上でも重要です。なぜなら得られた分類基準によって顧客のニーズ、置かれた環境、自社との関係等が異なってくることが明確化できれば、ビジネスの進め方にも変更や調整を加える必要が出てくるためです。代表的な分類基準として、法人/個人顧客の別、法人であれば所属産業や企業規模の別、個人であれば地域、性別、年齢層、行動パターンや嗜好性等の別が挙げられます。また包括的に考えるのであればこれらの複合によってセグメントが導き出されます。そしてそれを架空の人物像として分かりやすい形で定義しなおしたものをペルソナと呼びます。例えばペルソナ名称 = ジョンソン氏としたとき、「ジョンソン氏は、一軒家を持ち、子供は既に独立していて妻と二人暮らし、既に定年退職して悠々自適の暮らしを送っている。口座には二人が老後を遊んで暮らすのに充分な資産があり、趣味は夫婦で旅行に出かけること ... 云々」といった形で表現されます。既存顧客であればこの条件に合致する顧客(持家区分 = 一軒家、教育ローン = 完済済み、世帯人数 = 2名(夫婦)、口座残高合計 > xxx万円、口座引き落とし箇所/カード利用箇所の場所数合計 > xx箇所以上 ... の全てに該当する顧客)を定量的に把握することが可能でなければなりませんし、これら顧客に関する追加指標によってさらなる理解を得ることも必要となります。

幾つのセグメントに区切られるべきかは自社ビジネスの多様性、特殊性に基づいて決定されるべきですが、このような基準を以ってセグメンテーションがなされ、自社の社員がビジネスを遂行する上で顧客像を頭に思い浮かぶことができるようになっていることが必要です。またそのような想像力を補完するため、適切なドキュメントや情報が共有されていることも必要になります。

対象市場

自社が採用しているセグメンテーションを基盤に、どのセグメントにどのようなアプローチをするべきか - これを設定し、律していくのがターゲティングです。ダーツボードに書き込まれている区切りがセグメンテーションであるとするならば、どの区切りを狙うのか決めるのがターゲティングであり、そこに向かって投げる矢が商品/サービス、もしくはオファーと呼ばれるその複合体です。ここでは、具体的なキャンペーンレベルでのターゲティングではなく、その上位概念として考えるべき、基本的な対象市場の特定が為されているかどうかを議論の対象とします。まず、セグメンテーションによって導き出された幾つかのセグメントの間で、相対的な重要度が理解されなければなりません。各セグメント内に存在している顧客がある程度同質であるという前提において、セグメントA とセグメントB ではどちらの顧客数が多いのか、どちらの経済価値が高いのかが理解され、その理解がビジネス活動上のリソース配分にも反映されなければなりません。また、それぞれのセグメントが有しているニーズと、自社の商品/サービスがどのような形でマッチングされるべきかを理解しなければなりません。

ここで設定されているべきはマッチングのリストと、そのマッチングをもたらしたニーズです。ニーズは消費者を対象として考えた場合、生活上のどこかで発生した、埋め合わせたいと考える欠落、理想とのギャップを意味します。ヒトはお腹が減れば食べ物を欲し、他人からきれいに見られたければ着飾ります。家族を安心して住まわせるためにマイホームを持ちたいが、当座のお金が充分でないのであれば住宅ローンを申し込みます。そしてそこには必ず、「消費者」とその人が生活している「場面」、欠落を埋め合わせてくれる「商品やサービス」、そしてそれによって消費者が得る「利益」が存在することになります。基本戦略として、この 4つが揃っている組み合わせが幾つ存在するか、そしてそれぞれの組み合わせを比較した際、どの組み合わせが相対的に重要かを理解する必要があります。このような組み合わせこそがニーズ、ビジネス機会です。

これに対して法人ニーズ。消費者が抱くニーズは様々であり、換金可能な利益と必ずしも直結するわけではありません。幾つかは経済的な利益を提供する商品やサービスかもしれませんが、感情的、感覚的な「満足」を手に入れるための商品/サービスも多く存在します。窓ガラスをきれいにしてくれる洗剤が、家計を楽にしてくれるわけではないのです。一方で法人が抱くニーズは、その多くにおいて定量的な利益を得るための投資として考えられます。実際的な効果の程、そして定量化の可能性はともかく、オフィスの中に置く観葉植物でさえ社員のアメニティ向上を意図し、生産性や創造力を改善するための道具として捉えられます。この意味において法人ニーズのほとんどは、論理的に定量化可能で、換金可能な利益として算出可能である「はず」であり、顧客はその投資に対する獲得利益の増大を目的としています。

まとめると、対象市場に対する理解として必要な項目は 4つ、対象セグメント、ニーズ、対応する商品/サービス/オファー、そして顧客が得る利益です。これらが何らかの形で形式化されて社内で共通認識として認知されていることが必要です。また、これは追って触れていくことにしますが、これらを実ビジネスとして刈り取るためのアプローチ、そのためのリソース配分が設定されていることが必要となります。

 「調査項目B: 市場および顧客」に関するワークシート (PDFファイル 22KB)

次回は「調査項目C: 外部環境(競合/社会与件)」をご紹介します。


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