ホーム > ライブラリー > Teradata Insight > グローバル製造企業のマネジメントを支援する情報基盤の構築 > 最終回:グローバルな可視化がもたらす業務効果

グローバル製造企業のマネジメントを支援する情報基盤の構築

佐藤 雅信
産業ソリューション事業部
プリンシパル・コンサルタント

最終回:グローバルな可視化がもたらす業務効果

連載が開始されて早 2ヶ月近くになりますが、この間にも我々を取り巻く環境は大きく変化しています。とりわけ、原油価格の上昇に起因する原材料費の高騰や消費動向の鈍化は顕著です。各製造企業においても、販売計画の見直しによる売り上げならびに利益目標の下方修正が次々と発表され、下半期修正のみならず来期の計画策定に例年以上のパワーを傾注していることと思われます。

毎年この暑い時期(7〜8月)になると、前職 20年余りの拙い経験を思い出します。計画の策定にあたっては、現状の把握と課題の抽出や、問題点に対する対応策の検討を行う上で関係するデータを収集し、資材・製造・販売・物流・拠点・体制など関連する項目について多くの部署を巻き込み、1円のコスト削減・利益の創出へ何度もシミュレーションし検討を繰り返しました。

現在のように企業の組織体が複雑になり、かつ海外での生産・販売活動の比率が大きくなった状態では、現状を可視化することが容易ではなく、いかに迅速に効率よく現状を把握できるかが企業競争のポイントの一つであると言えます。今こそ自分の会社の実態を、正確に迅速に効率よく可視化できることの成否を問われる時ではないでしょうか。

最終回となる今回は、読者の皆様からいただいたご要望を参考に、グローバル展開する製造企業における日々の業務面からの IT活用、その一つの可視化による成果についてご紹介します。

1. モノづくりにおける効果(注力すべき活用の領域)

日々の経営活動、とりわけモノづくり企業においては多くの部署が様々な活動を行い、その結果を確実に把握し次の工程もしくは翌日の活動に活かしています。企業活動の結果、つまり各部署で生まれてくる実績の活用において多くの工数と時間がかかっていることを、経営層およびマネージメント層の方々はどれくらい認識されているでしょうか。

上の図は、モノづくりの基本的なプロセスである調達・製造・販売の管理業務フローを表しています。縦に調達・製造・販売と区分し、上段から計画策定プロセスとして、年間の事業計画に基づいた月次計画および週次計画を策定し、日々の業務の基本計画となる日次での作業指示へと繋がります。この作業指示に従ってプロセスごとに活動が実施され、一日の作業結果である実績が各部署で報告されます。これは、各企業の情報システム部門と業務部門が一緒になって構築してきた、基幹情報システムの活用される領域です。各企業は長年にわたり、これら一連の流れの標準化に取り組み、更なる効率化に向けた情報システム化を進めています。

これに対し、図の下段に監視・評価・分析と表記している分野はどうでしょうか。例えば調達活動において、担当者は日々の実績をもとに予算との対比や納入リードタイムの遅延の有無、納入された原材料の品質の確認を行い、その結果を評価・報告し次の契約時の価格交渉や取引先の選定を行っています。同様に製造および販売活動においても、計画との予実管理や業務の進捗状況の確認、製品の品質確認を行い、その結果の評価・分析を行っています。これらの業務の大半は、担当者の手作業による資料作成やパソコンでのデータ管理、報告書作成です。資料作りのための情報収集と分析に多くの時間と工数を要しているのが実態ではないでしょうか。これらの監視・評価・分析業務を正確に迅速に効率よく支援するのがデータウエアハウスです。

従来に比べ生産工程の海外展開が進み、グローバルでの調達・製造・販売活動となっている現在、リードタイムの延長と総在庫の増大が、各企業における利益創出の妨げの一つとなっています。ここで重要なのは現状の把握とともに、タイムリーに分析された結果を調達・製造・販売の各部門での活動にフィードバックすることです。それによって、業務部門ごとに取り組んでいるムダ取りや工数の削減が促進され、工程ごとの在庫ならびに工程間在庫の削減とリードタイムの短縮が効果的に推進することが可能となります。

2. 物流における効果(購・生・販・物の一元化)

私の部門では、データウエアハウスによる企業のビジネスの可視化をお手伝いしていますが、私自身が色々なお客様をお手伝いさせていただいて気付いたことがあります。各企業に共通して課題として取り上げられるのは、データがなくて状況が見えないのではなく、データが部門および拠点のいたるところに散在しているために情報として見ることができないということです。他の部署の状況が見えないために問題の真の原因が解りませんでしたが、部門を跨いで情報を共有することで、今まで解決できなかった課題の対応策が明確になることが多くあります。

例えば、在庫の削減を進める上で企業の全ての在庫状況が把握できているでしょうか。拠点の最終在庫を把握することは容易ですが、拠点の中の各工程の在庫や工程間の在庫は把握できているでしょうか。まして、拠点間の輸送途中の在庫状況となると、把握できていないのではないでしょうか。例えば自社の拠点から出庫された後に外部の物流会社に委託され、輸送および海外の拠点間在庫となると、殆どの場合は次の拠点に着荷した時点で初めて把握できるのではないでしょうか。

物流分野の情報システムとして、倉庫は WMS(Warehouse Management System)、輸送は TMS(Transport Management System)を導入している企業は多くありますが、大半は拠点ごとに倉庫と輸送のそれぞれの業務システムとして活用しているに過ぎません。しかしながら、仕事の指示を情報として見てみると、配送は「いつ・何を・いくつ・どこへ・いくらで」運ぶことであり、倉庫では「いつ、何を、いくつ」預かり・出すのかですが、販売は「いつ、何を、いくつ」売るのであり、生産は「いつ、何を、いくつ」作るのかであって、要するに作業の基本となる情報は同じ項目で構成されていると考えられます。この場合の違いは、それぞれの業務の『時間』と『場所』が異なることです。販売する時間(時期)と生産する時間(時期)が異なるから、その差の「在庫」が発生します。同様に、販売する場所と生産する場所が異なり、拠点間の距離を繋ぐために輸送が発生します。つまり、これら時間と場所(距離)の差を埋める手段が、物流の輸送と倉庫での業務となります。

しかし、生産と販売が連携をとって情報システム化されているものの、物流においては分断された情報となっている場合が多くあります。何度も申し上げますが、生産と販売が国内に留まらずグローバル化された現在においても、調達・生産・販売と物流を一元的に把握できる状態ではなく、各部門の担当者の弛まぬ努力の賜物として効率化や在庫削減取り組みが行われています。各拠点で個々に管理されている物流情報を一元的に管理し、物流部門のみならず関係する調達・生産・販売の各部門が活用することで、全社に亘り大きな成果を生み出すことが可能となります。

物流の可視化による効果は、物流部門での在庫削減やリードタイムの短縮だけにとどまりません。例えば、現場設置型の重量物や建設機器の生産においても活用が可能です。一般的に、現場設置型の製品においては設置(納入)リードタイムが長い上、建設現場の工程に合わせて必要なものだけを納入しなければなりません。工場においては生産効率を考慮して、計画的に生産し、在庫を行い、納期に合わせて配送・搬入されます。この結果、工場もしくは建設現場の近郊に長期の在庫が発生します。また、建設現場では天候および他工程での進捗の遅れによる納入日程の変更に対応するために、在庫が慣習化されています。しかし前出にあるように、建設現場での計画と実績の予実差である日程の変更が、輸送および物流倉庫とともに工場の製造・調達部門でタイムリーに把握できれば、建設現場の作業状況に連動したモノづくりが可能となります。これは既に、現場設置型モノづくりで活用され大きな成果を挙げています。

3. 需給調整における効果

原材料の在庫削減において、各企業ではさまざまな方法で成果をあげています。自社で原材料から最終製品までを一貫して生産している場合より、他社に原材料を発注して調達する場合が多いと思われますが、この場合、いかにして必要な量をタイムリーに調達するかが重要であることは言うまでもありません。材料在庫の削減方法の一つとして VMI(Vendor-Managed inventory)が有名ですが、VMI の導入だけで材料在庫が削減できるのではなく、引き取り責任による在庫増加を防ぐためにもフォーキャストの精度が重要となるのはご存知の通りです。

VMI は、納入(供給)する側が購入側から提供される購入予定および生産計画に基づき、多頻度の納入に関わる工数・コストを低減し、購入側も必要部品を見掛け(相手先名義のため)の在庫を削減しつつ身近に確保することを目的に導入されるのが一般的です。購入側の導入目標としては、前述のように必要な時に必要な数量を購入(調達)することを挙げることが一般的ですが、納入側に提示する購入予定(フォーキャスト)の数量については法的(下請法)に月内での引き取り責任があるために、急激な生産計画の変更による差額分が月末には引き取り購入対象となり、結果的にフレキシブルな在庫調整とはほど遠い材料在庫の増加を招いているケースを見かけます。販売計画、生産計画および購入計画の策定において、関連部署がどのデータに基づいてどのように判断し、次工程に正確かつ迅速に情報を伝達、確認しアクションを起せるかが、サプライチェーンの要である需給調整で重要となります。

上の図で見られるように需給調整業務においても、営業から出された要求に対しモノづくり部門からの納期回答までの間に行われる各部署での判断および調整業務を迅速かつ精度を高めることが重要となります。そのためには、全社の情報を明細データレベルで一元的に可視化でき、タイムリーかつ正確に判断を支援するデータウエアハウスを活用することにより、変更に伴う利益変化の把握とともに全体のリードタイムが短縮され、販売機会の損失回避と在庫の削減による利益の確保に大きな威力を発揮します。

4. 最後に

連載を終わるにあたり、まず 4回にわたる拙文をお読みいただいたことに心から感謝申し上げます。文中でも申し上げたとおり、私は 2年前までモノづくりの世界で育った人間です。IT を作る側ではなく IT を使う側でした。工場を皮切りに物流業務を中心に、資材調達や海外事業場の立ち上げや工程のムダ取りなどを経験し、縁あって日本テラデータ社で現在の業務を担当しています。

これからも当社の今までの経験とソリューションが、変化の激しい環境のもと日本のモノづくりに微力ながらお役に立つことが出来るように日々精進して参ります。

今回、限られた紙面の上で日々考えていることがどれほどお伝えすることが出来たか不安でありますが、貴重なご意見を賜りますようお願い申し上げます。

連載に関するご意見・ご感想をお待ちしております。
今回の連載に関するご質問・ご要望などがございましたら、marketing@teradata-j.com 宛てに電子メールにてご連絡ください。

ページの先頭に戻る