ホーム > ライブラリー > Teradata Insight > グローバル製造企業のマネジメントを支援する情報基盤の構築 > 第3回:企業のグローバル戦略遂行を支援する情報基盤(後編)
佐藤 雅信
産業ソリューション事業部
プリンシパル・コンサルタント
製造業のグローバル化や顧客ニーズの多様化が進み、企業のコンプライアンス(法令遵守、J-SOX法の施行、開示情報の範囲拡大、例えばセグメント情報)が非常に重要となっています。各企業では、グローバルレベルでの情報共有、ますます複雑となるビジネス環境での迅速な意思決定に加え、企業活動の透明性、管理情報の整合性への取り組み如何が、企業の存続に影響するほどの重要課題となってきたと言われています。
しかしながら現状は、タイムリーに実態が把握できないため、販売機会の損失や在庫の増加・欠品・採算性の悪化等のロスが発生しています。また、情報を把握するためにスタッフがさまざまな部門からレポートを収集・加工・集計し報告を行わなければなりません。そのため、情報収集・管理コストが増大するとともに、作業リードタイムが長く、情報収集だけでスタッフは手一杯となり、本来の分析や先手管理のための予防策を打つことが出来ていないケースが多くの企業で見られます。
また、部門ごとに個別にデーターマートを構築しているために、維持管理コストの増大や、組織変更・M&A による企業拡大に伴う対応コストの増大もよく見られる課題のひとつです。
第3回目の今回は、グローバル展開する製造企業が行う、データ統合によるライトタイムでのタイムリーな業績管理とマネジメント変革について、事例を交えながらご紹介します。
まず、情報活用を行なう上で各企業に見られる経営管理における現状課題と対応の方向性について、6つの視点からご説明します。
・各国の拠点(部門)ごとに、独自のKPI・レポートフォーマット・画面で管理
・グループ横断で管理する際に再集計・加工が必要で、手間がかかる
【対応】・グループ横断で管理する KPI・レポートフォーマット・データ定義を統一
・横串での横断管理が実現可能となる
・月次での確定が翌月後半になる
・このタイミングで分析・施策検討を行うため、1ヶ月のタイムラグにより対応遅れ
【対応】・週次もしくは日次で状況を把握することにより、先手のアクション・対応が可能となる
・本社スタッフは経営幹部からの要求・指示により、現法への情報要求・部門調整を行い、情報をまとめて経営幹部に報告
・特に最近は急激な原材料の高騰や為替等の環境変化により、要求項目が増加
・本社スタッフはもとより、現法・関連部門スタッフの工数・コストが増加
・これらの多くが手作業で集計されているため、経営幹部への回答リードタイムが長大
苦労して報告した頃には、情報が古くなっている可能性もある
・経営幹部が必要な時に必要な情報を簡単に取得できる
・タイムリーで効率良い情報取得により、経営幹部・スタッフによる適時の意思決定が可能となる
・多くの場合、サマリー・定型フォームでの実績報告
・切り口を変え、詳細化した分析を行うために再度の集計、別の情報取得が必要
【対応】・情報を明細レベルで統合して格納することで、オンラインでの分析を実現
・分析ニーズに迅速に対応することが可能となる
・各現法がデータを抽出・加工・集計して本社スタッフに報告、本社で集計・加工しレポート
・加工・集計により報告値から発生情報までの透明性を保つことが難しい
・本社スタッフから現法スタッフに情報提供を依頼する際、部門ごとに実値を確定させるため管理値が異なっている可能性もあり、情報の
整合を行うための工数が発生
・発生情報を一元化、同一発生情報から各部門がデータ取得を行い管理整合を図る
明細データの積み上げによる実績提供により、発生情報までの透明性を確保できる
・分散したサマリーでの管理のため、組織変更・事業階層変更時の前年値洗い替えが困難
・プログラミングによる画面開発のため、管理要件変更時にコスト・工数が発生
【対応】・データを明細で一元管理することで、階層マスタの変更で前年値の洗い替えが容易
管理要件の変更にタイムリーに対応が可能となる
以上が、各企業に見られるグローバル展開における経営管理での代表的な情報活用課題と対応の方向性の例です。
第2回の 1章「グローバル戦略成功の鍵」でご紹介した全社データウエアハウスの活用について、「管理の視点」と「活用の視点」の面から効果をまとめます。
まず「管理の視点」では、予めグループとしての管理体系を整理することが重要です。
例えば、全社連結での財務指標が中心の管理/事業・業務機能を、横断的なグループ全社の管理、会社・組織単位での個別管理、現場・部門単位での現場オペレーションの管理等に分類し、個々の層で必要な指標の洗い出しと層間での整合性を持たせて体系化する。これにより、企業全体での管理整合を実現することが出来ます。また、明細データによる容易な詳細化や分析軸の切り替えによる高度な分析が可能となり、容易なデータ抽出が可能となるため、従来の複雑な報告プロセスをシンプルかつ高速化することが可能です。
次に「活用の視点」では、管理会計はもちろんのこと財務会計のデータソースとしても活用することにより、財務および管理会計上の管理体系(社内取引や施策単位等)との整合性が実現可能となります。
実際、EDW導入企業での事例として、グローバル展開しているグループの管理においては国内の管理が中心で、連結、特に海外拠点で把握が出来ていませんでした。そのため、全社の実績把握に本社・現地スタッフの工数・時間が非常にかかり、報告も翌月以降にしか出来ない状態でした。その結果、月中でのアクションが不可能となり、製品在庫の偏在と増加が発生し、製造原価の低減も困難な状態でした。
しかし、連結ベースデータの日次での一元化を進めるとともに、管理指標と管理階層の定義を全社で取り決め、日々の業務で各階層が実践し、調達コストの強化・在庫管理の適正化を進め、各階層が活用する BIツールの導入を推進しました。
この取り組みで、管理会計用に売上・粗利の連結処理をデータウエアハウスを利用し日次で行うことにより、以下が実現されます。
違った切り口の事例として、明細データが一元的に格納されているため、業務プロセスの監視や不正検知等の内部統制にも大きな威力を発揮することが可能となります。
実際に、データウエアハウスを活用することにより、監査プロセスが簡素化かつ精度が向上した企業事例もあります。内部統制としてのサンプリングテストへの活用、外部へのオーダー(PO)と外部からの請求のタイミングのチェックを行い、業務プロセスの社内ルールが遵守されているかを詳細にチェックすることが可能となります。
この記事が掲載される頃は、各企業において下期修正事業計画ならびに次年度の事業計画の立案に取り組まれていると思いますが、事業(予算)計画の策定においてもデータウエアハウスを活用して、作成リードタイムの短縮と工数削減と精度向上に大きな成果を生み出すことができます。
多くの企業で見られる計画作成のプロセスでは、本社部門が部門ごとの入力フォーム(Excel等)を作成し、各担当部門が前年実績を参考に次年度の計画値を入力し、本社で集計チェックを行いその都度関連部門と何度も調整を行い、計画値を決めるまでに多くの工数とリードタイムを要するのが一般的と思われます。
ここで少し視点を変えて計画作成のプロセスを見てみると、本社ならびに各部門の担当者が参考とする前年実績は、当然の事ながら例えば製造・営業・物流の各部門においても品番・数量(台数、重量、容積等)、金額といった項目でデータが存在します。
しかしながら、計画の項目は上記部門で同じでしょうか?多くの場合、製造および物流部門は実績と同じ項目で計画値の積み上げがされますが、営業部門においては当然ながら、金額はあるものの数量での計画作成は難しいのが実態ではないでしょうか。実績において各部門とも同じレベルで把握が可能であるにも関わらず、計画作成においてはこれらの部門間の違いを本社予算担当部門が膨大な工数をかけて集計と調整を行い、整合性を保つ努力をしているのではないでしょうか。
そこで、自社の各部門の明細レベルの実績データをもとに、データウエアハウスで事業(予算)計画を作成するプロセスを活用することにより、本社と各部門との調整が容易になります。さらに計画策定を取りまとめる部門(経営企画・経理)においては、各部門の作成進捗状況の把握、部門での必要な前年実績参照が容易となり、入力値のチェックや集計の迅速化、作成履歴の管理が可能となります。
さらに、データウエアハウスでの計画策定後、日々の予実管理での活用を図ることにより、計画作成プロセスの短縮に留まらず、企業における管理プロセスの効率化ならびに精度の向上を実現することが可能となります。
製造企業の各業務プロセスで発生するデータを明細レベルで、全社レベルで一元管理する「EDW」を活用することにより、高度でシンプルな経営管理を実現することが可能です。
次号では引き続き、さらなる構築事例と効果についてご紹介します。