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グローバル製造企業のマネジメントを支援する情報基盤の構築

佐藤 雅信
産業ソリューション事業部
プリンシパル・コンサルタント

第2回:企業のグローバル戦略遂行を支援する情報基盤(前編)

海外生産を含む製造企業のグローバル戦略の急速な展開により、企業構造は複雑となり、グループ企業全体の実態をリアルタイムで把握することはますます難しくなっています。

企業マネジメントにおいては、グローバル化したグループ企業の連結業績をリアルに管理すること、すなわち「今」「どこで」「何が」行われているかを正確に把握し、対処法を決定することが重要です。また業務プロセス管理においても、連結グループに範囲を広げたサプライチェーンの強化と効率化も急務のテーマと言われています。

第2回目の今回は、グローバル戦略を遂行する上で重要なマネジメントを支援する情報基盤の構築と情報活用について、事例を交えながらご紹介します。

1. グローバル戦略成功の鍵

製造企業はグローバルに生産拠点や営業拠点を配置し、海外事業比率の拡大を目指します。このような全社グローバル運営の一体化、ならびにグループ経営基盤の構築といった海外戦略を成功させるために鍵となるのは、拠点ごとに分散したデータを統合する情報基盤の構築と IT の活用です。しかし、データ管理においては、精度の高いデータを海外拠点から収集できることや、各拠点/システム別に異なるコードを変換するルール作りなど、データ収集過程での課題も多く存在します。

業務管理の視点で見ると、各拠点の生産・在庫状況や工程改善の進捗を一元的に可視化できることで、各工程ならびに工程間の効率化推進が可能となり、在庫削減が促進されます。しかし、データ収集過程での課題も多く、本社(日本)と現場(海外)双方にとってのメリットを意識しながら、データ統合を推進することが重要となります。それら課題解決のためのデータ統合の推進には、経営トップの参加が必須です。

トップが率先して情報を活用し、現場にアクションを促すことで、現場にデータ統合および活用に対する意識改革を迫り、基盤構築サイクル自体を早めることが可能となります。経営トップ、現場双方が見たい情報を、見たい形で、見たい時に、簡単に見ることが出来る環境があれば、仕事の質を向上させ、加えて社員のモチベーションアップにまでつなげることができます。これは、弊社ソリューションの基本コンセプトであり目指す姿です。

2. 部門間連携によるマネジメントの強化

次に、グローバル戦略を展開する企業のマネジメントを高める上での、現地法人や部門間の連携における情報基盤の重要性について説明します。

グローバル化する資材・調達プロセスの中で、拠点ごとの情報を的確に分析し、個々の拠点間での調達量・妥当性、透明性を確保する事は重要です。SCM最適化のためには、地域に集約された拠点間での製造・流通状況、海外サプライヤーからの調達状況など、製造ライフサイクル内のボトルネックを把握する事がさらに必要になります。

そのためには、広がる製造拠点間の材料在庫状況をリアルタイムに把握し、製造に関わるボトルネックを把握し、SCM を最適化できる情報を迅速に活用できる IT基盤が必要です。また、材料在庫・輸送コストなど資材物流コストの低減と、短いリードタイムを保証するロジスティクス網の構築が成功の鍵であり、そのために部門ごとのデータ収集と、リアルタイムに分析できる情報基盤が不可欠です。資材・調達に関わるプロセスの妥当性・透明性を把握できる情報活用により、支出の妥当性・透明性や購買価格ならびに購買量の妥当性の判断も可能となります。

しかしながら、組織の増大や再編およびグローバル化により、結局のところ集計作業を手作業で対応するようなケースも散見されます。またレガシー等の情報システムからのデータ抽出が加われば、その集計・加工と、分析にはかなりの労力と作業負荷が発生することとなります。

広がっていく拠点の情報を迅速に把握して企業状況を可視化できなければ、製造プロセスの中に存在するボトルネックを把握し、的確な時期に的確な施策を実施する事はできません。例えば、中国での製造や物流では各拠点の実情が迅速に可視できないために、リードタイムが長期化し在庫が増大するケースが少なくありません。これらの傾向を抑制し、リードタイムをいかに短期化できるかが重要です。そのために、まずは在庫位置を含めた拠点ごとのデータを欠く事なく収集できるITの活用により、拠点ごとの在庫量と拠点間の在庫位置(輸送中在庫)を把握する事で、材料欠品ならびに在庫偏在の防止が可能となり、リードタイムを管理し短縮することが促進されます。

3. プロセス・マネジメント変革 「連結グループにおけるサプライチェーンの効率化」

次に、情報活用のプロセス・マネジメントにおける効果を説明します。

グループ企業内に散在する各拠点・部門のデータが 1つに統合されていることにより、サプライチェーン領域の業務や成果が可視化され、実態に基づく適切な意思決定と適切な指示による業務推進が可能となります。このことにより、従来の部門最適に偏りがちな業務管理から、全社グローバル最適の視点による連結グループにわたるサプライチェーンを実現します。

点在する拠点情報を日次で統合することにより、通常月次の締め後にしか把握できなかった全社の状況を月中で把握することが可能となります。これにより、タイムリーな情報を全社グローバル横串で可視化することにより、意思決定の質向上と短サイクルに変化させることができます。

多くの企業では、海外拠点の実情を月次締め後に Excel の情報から把握しています。しかし、集めた情報精度が不足することによる意思決定の遅れや誤った判断の発生、本社部門による拠点情報集約の負荷増大、データの不整合による調整業務などの課題が挙げられます。

これらの課題はデータ統合と見える化により、月中の意思決定サイクルの高速化、全体最適に向けた意思決定、情報集約の負荷軽減、明細(素)データの活用により整合性確保が可能となることで解決できます。

ここで組立製造業を例に、グローバル製販データの統合によるサプライチェーン強化についてご紹介します。

製品の販売予測に基づいて生産計画や調達計画を策定するサプライチェーンモデルの場合、販売先との週次・月次での商談状況において、実需や販売先の在庫情報を取得し販売予測の精度を上げ、販売先との関係強化を進めることが少なくありません。 この場合、当然の事ながら販売先での競争が激しくなり、メーカー主導の商談を行うことは難しく、加えて材料仕入先との調達リードタイムが長く、リードタイムの短縮に限界が生じます。その結果、サプライチェーンにおいて、工程での在庫やリードタイム・管理工数などの増大が発生します。

サプライチェーンの効率化を妨げる要因は単一ではなく、それぞれの部門(プロセス)相互が関連しています。 その中でも、以下の 3つが多くの企業に共通して見られる課題といえます。

  • 販売および生産の計画精度が低い
  • 柔軟で迅速な変更ができない
  • リードタイムが長くなる

これらの阻害要因に対して、製販部門間の情報共有を迅速かつスムーズに行い、部門間ならびに会社間の調整を行うことが課題解決の 1つといえます。言いかえると、製販部門間の連携による需給業務の高度化と PDCAサイクルの精度向上、迅速化、効率化が必要であり、これらを支援する製販グローバルデータの統合による可視化が有効となります。

グループ企業内に散在する各拠点・部門のデータを 1つに統合し、実態に基づく適切な意思決定と適切な指示や業務分析を行うため、日々の実績を

  • TOP階層に対して、的確に解りやすく提供するマネジメントダッシュボード
  • 事業マネジメント階層に対してダッシュボードより詳細なレベルでの経営指標確認と分析
  • 業務オペレーション階層に対しは部門レポートの作成や効率化に向けた分析への活用

など、各階層ユーザーの利用目的に応じて適切な見える化の形態を選択し活用することで、迅速かつ正確で効率良く意志決定を支援することができます。

データ統合を構築した企業において、サプライチェーンにおけるグローバルデータ統合と活用により生み出される効果の一例は以下のとおりです。

  • 在庫削減、生産コストの削減
    在庫削減では、連結在庫の適正化、在庫管理サイクルの短期化
    生産コスト削減では、月次生産の平準化、廃棄材料の削減、グローバル供給体制の最適化
  • 作業効率化
    データ作成/分析の省力化
  • 販売の増加
    販売機会損失の減少、営業施策の迅速化、市場分析の精度向上
  • 物流費の削減
    工程間の調整による輸送業務の平準化による運送費(特に航空運賃)の削減

さらなる構築事例と効果については、次号で引き続きご紹介します。

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