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グローバル製造企業のマネジメントを支援する情報基盤の構築

佐藤 雅信
産業ソリューション事業部
プリンシパル・コンサルタント

第1回:グローバル化を進める製造企業が抱える問題点

製造企業間の競争が激化する中、新たな市場を求め、かつコスト競争力をさらに高めるために、海外生産を含む企業のグローバル戦略が急速に進んでいます。その結果、企業構造はグローバル化に伴い複雑化し、企業全体の実態把握が困難となっています。 しかし、経営管理の視点からは、グローバルでの低コスト化や生産プロセスの分散メリットを活かす「世界全体最適」と、地域市場にあった商品やマーケティング戦略を実施する「地域最適」のバランス経営が必要とされています。

モノづくりにおいては、次の 2点が重要視されています。

  • R&D(研究・開発)から設計製造・販売までを現地で完遂する体制を構築し、製造に関する機能をいくつかの拠点に集約して効率化を図る。
  • 地場有力メーカーとの協業・提携、OEM や EMS の活用を促進する上で、グローバルに分散する生産拠点・市場の情報を一元管理する。

このことにより、点在する拠点情報の集中管理による「世界最適生産」の実現や、各地域市場の動きを迅速に把握、迅速な意思決定によるリスク(在庫リスク・取引リスク)回避が可能となります。

しかし情報の分散や、低コスト化のためにグローバル化させた製造拠点間の調達・材料供給の問題で製造リードタイムが長期化し、その結果、製造サイクルの中にボトルネックが生じ、コスト面でも逆効果となり低コスト化のメリットが半減しているケースもあります。

このコラムでは、日本の製造業を取り巻く環境の変化に対応する一つの施策として、モノづくりならびに企業全体の経営管理を支援する情報基盤構築の目的について、事例とともに紹介していきます。

1. 海外売上比率 5割に迫る日本の製造業

日本の製造業の海外売上高比率が最近4年間で約8%高まり、2008年3月期では過去最高の 5割近くに達したことは記憶に新しいところです。従来、内需型と分類されてきた食品や日用品企業の比率上昇が全体を押し上げていることが大きな理由で、輸出型に分類されてきた自動車・電機・機械に加え、食品や繊維の高い伸びが全産業の海外売上比率を約3割にまで拡大する結果となりました。そもそも海外売上高とは、自国以外での製品の販売およびサービスの提供を通じた売上高を示し、日本からの輸出以外に海外で生産し販売したものも含んでいます。

図1. 製造業を取り巻く現状

この背景には、市場が成熟し今後縮小することが見込まれる国内と違い、利益を確保しやすい海外の新たな市場、特に新興国への拡販が増え、販売活動地域のすそ野が広がっていることが挙げられます。これは文字通り、グローバル規模でのライバル海外企業との競争が一段と厳しくなってきたことを示します。消費価格下落への対応と高付加価値商品の開発と市場導入といった、相反する生産販売活動を勝ち抜くために、消費動向の把握と分析・予測ならびに開発から製造・販売に至るリードタイムの短縮が不可欠となっています。このような状況の下、企業は「生産拠点の海外展開vs国内回帰」「グローバル価格競争」「顧客ニーズのグローバル化、多様化」「M&A・アライアンス」「コンプライアンス」「ローカル人材活用」等の問題を抱え、迅速な決断と対応を迫られています。今こそ、グローバルでの経営判断のスピードが企業競争力を決定すると言っても過言ではありません。

2. 企業活動のマネジメントの実情

海外での事業活動比率が飛躍的に拡大する企業の多くは、自社の各事業のグローバル一体運営を事業戦略の一つに挙げ、グループ経営のグローバル化を推進しています。そのために、一体運営を見据えた事業の再編、グループ企業も含めたガバナンスの強化、グループ共通の管理体制強化など事業の拡大を支える強固な基盤構築を目指します。しかしマネジメントの実情は、事業の進捗が本社サイドで見えない、現地法人からの報告を鵜呑みにするしかない、月次会議は前月の結果に対する説明が中心であり、課題への対応の結果進捗は 1ヶ月先の会議報告を待つしかないといった状況を多く見かけます。さらに、現状把握レベルでは、権限を分散し各現地法人に責任を委ねるしか選択の余地がありません。その結果、現地法人または事業部・工場毎に個別最適でのオペレーションとなってしまい、全社およびグループとしての効率化がどのように何処まで図られているか判りません。現地の状況を的確に把握できないため、本社部門が現地法人や事業部・工場の業務にまで踏み込んだ支援や改善指導を行うことが困難となり、利益拡大に向けた取り組みが厳しくなっています。

図2. グローバル企業のマネジメントの実情

3. 事業環境の変化に対応したマネジメント変革

企業がグローバル化し、為替変動や原料の高騰など日々刻々と変化する環境の中において、この変化に対応したマネジメントの変革が必要です。主なポイントとして、(1)グローバル・グループ管理、(2)プロセス・マネジメント、(3)部門間の連携、が挙げられます。具体的なマネジメントスタイルの変化について例を挙げてみます。

(1)グローバル・グループ管理
経営者が日々、全社の状況を把握し変化を知覚、そして経営トップが知覚していることを現場が認識することにより、いわゆるごまかしがきかず、事実認識による説明が必要となります。見えないから丸投げではなく、見えた上での権限委譲が可能になる、というように管理のあり方が変わってきます。また、経営と現場の密なコミュニケーションによる信頼の向上が一層進みます。会議のあり方も、現状が関係者で共有されることにより、過去の報告ではなく将来に向けた対策を論議する場へと変化します。このことにより、権限の集中か分散かの極論ではなく、バランスの取れた組織運営へと変わっていきます。

(2)プロセス・マネジメント
いわゆる結果評価だけでなく、結果を導くプロセスに対する働きかけ(改善)や、日々の変化に基づき先を見据えたオペレーションに変化します。予算進捗の対比がタイムリーに行われることにより、早期の問題把握と的確な対応が可能となります。共通の KPI によりそれぞれの業務比較や成功事例を共有することで、業務改革やナレッジシェアが進みます。言うなれば、集計はコンピューターに任せ、人間は考え行動する仕事に集中することが出来るのです。

(3)部門間の連携
日々の業務においても、グローバルでの全社的な業務調整をはじめ、販売・生産・在庫の可視化による在庫削減が可能となります。また、前後の工程の可視化によるムダ取りやリードタイムの短縮、ならびに関連法人・部門間での連携の強化により原材料調達・生産拠点の再配置や物流システムの構築が促進されます。営業分野においても、グローバル展開する顧客への対応、国際ブランドの広告宣伝に大きな効果を生み出します。そして全社の組織においても国別に業務を持たず、可能な業務を最適な国に集約するなどの効率化が図れるようになります。

これらのマネジメント変革を推進し支援するために、全社にわたる「情報基盤の構築」が最も重要となるのです。

4. エンタープライズ・データウェアハウスと基幹系は車の両輪

グローバル展開する企業において、マネジメントの阻害要因の主なものに「情報活用」もしくは「データ活用」の欠如が挙げられます。企業ではたくさんの情報が日々生み出されます。しかしその大半は、発生した部署(部門)での活用に留まっており、言い換えるならば「情報が散在」して活用されないままの状態となっています。情報基盤の整備・構築が進んだ企業とそうでない企業の違いを比較すると、主なものに情報の「伝達スピード」「整合性」「詳細さ」「共有範囲」「可視化の範囲」があります。

企業は、基幹系システム(ERP)の導入によってプロセスの標準化およびシステム間連携が促進されたといえます。しかし、ERP は効率的な業務処理の目的で構築されており、データに関する要件も業務機能別に最適化されているため、分析や意思決定などのニーズには対応していません。そのため意思決定に必要な情報の収集や分析に多大な時間と工数を要し、判断の遅れにより甚大な損益を生み出す状況が散見されます。

現場担当者から経営トップまでが利用する整合性が取れた全社的なデータの統合により、業務プロセスの可視化推進や組織間の情報共有と標準化促進、新たな情報価値の創造等、あらゆる用途に活用できる明細レベルでの履歴情報の管理が実現します。このように、外部環境の変化に合わせて「適切な意思決定」がタイムリーに実現できる情報提供基盤(情報系システム)が、エンタープライズ・データウェアハウス(EDW)です。ERP と EDW はそれぞれの目的と用途に合わせて活用することにより、企業経営・業務を支える「車の両輪」として企業の戦略遂行を支援することが可能となります。

情報基盤の構築によるデータ活用の事例については次号で紹介します。

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