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ポストCRMを読み解く10のキーワード

山本 泰史
マーケティング統括部
マーケティング部 スペシャリスト

第10回: キャンペーン管理

これまで 9回にわたってお送りしてきた、「ポストCRM を読み解く 10 のキーワード」。最終回の今回は、「キャンペーン管理」をキーワードとしてご紹介する。キャンペーン管理とは、具体的なソフトウェアアプリケーションのことでもあり、マーケティング活動を実現していく上での手法でもある。以降、根底をなす「キャンペーン」についてまず触れ、追ってキャンペーン管理の考え方を説明する。

キャンペーンの定義

一般に想定される「キャンペーン」は、TVCM 等でよく謳われる「買うと何かもらえる(もしくは抽選であたる)」類のものだろうか。その定義は間違ってはいないが、一側面しか表していない。ここで定義するキャンペーンは、より根源的なものである。企業のマーケティング部門は、データ分析や市場動向の注視に基づいて、ビジネスチャンスや重視すべきテーマ、覚醒を促したいニーズを定義する。そしてそれに基づいて顧客に対するアプローチを行なう。これは最終的に売上に帰結しなければならないが、ここで設定される売上目標に対して、ある特定の顧客群、特定の商品群、もしくは特定のタイミングに絞ってアプローチすることになる。このような流れを総称して「キャンペーン」と呼ぶ。より従来的な表現をすればプロモーション、企画、催事といった言葉になるだろうか。いずれも、キャンペーンはマーケティングの「単位」であり、企業が顧客に対して提案する「単位」である。

キャンペーンの構成要素

従ってキャンペーンは、特定の顧客、オファー、チャネル、タイミングによって構成されることになる。例えば「春の新色リップグロス」キャンペーンであれば、女性で 25歳から 35歳の顧客に対して、新色のリップグロスを、ダイレクトメールを通じて、3月15日に案内することになる。

これは商品に主眼を置いて合致する顧客、チャネル、タイミングを構成した例だが、軸になるのは顧客でも構わない。「日本食派」で「インスタント志向」のセグメントに対する年末年始のオファーを考えれば、案内商品「おせち」や「年越しそばセット」になるかもしれない。そして企業の感度が高ければ高いほど、このようなキャンペーンは数多く、同時並列的に実行できる。優良顧客向けのキャンペーン、イベントトリガーを利用した離反阻止キャンペーン、「アウトドア派セグメント」向けの定期継続型キャンペーン等、アイデアは様々に考えられる。そしてそれは企業や接している市場によって異なってくる。

キャンペーン管理の考え方

このように複数のキャンペーンが存在するとき、ある顧客には同時に複数のキャンペーンが案内される可能性が出てくる。前述の離反阻止キャンペーンと、「アウトドア派セグメント」向けの定期継続型キャンペーンの両方が同時に案内されるようなケースである。同一店舗の複数のテナントから、ダイレクトメールが同時に送られるような事態も同じである。このような場合に優先順位を設定し、適切なインターバルをおくことが必要になる。キャンペーン管理はこのような機能を司る。

キャンペーン管理が司る機能はそれだけではない。選定条件の登録による対象顧客抽出、案内メッセージや商品の設定、利用チャネルの指定、実施タイミング(3月15日に案内、あるイベントが検出されたら案内、毎月 10日に案内等)の設定...といった計画作業全般も司ることになる。さらに、計画されたキャンペーンの実行管理も行なう。スケジュールとデータベースをモニタリングし、タイミングが来た段階で、対象顧客リストと案内メッセージを各チャネルに連携させることになる(この際に前述の優先順位等も考慮される)。このため、マーケティング担当者はキャンペーン管理ツールにキャンペーン計画を設定すれば良い。後はキャンペーン管理ツールが自動的に実行してくれる。

幾つかの先進企業はこのようなツールを既に実装している。前回までで述べてきたセグメンテーション、イベント定義、個別化、マルチチャネル管理、プライバシー(デリカシー)も全てルール化され、キャンペーン管理ツール上に実装される。これにより、多種多様な顧客のニーズに対して、一元的でありながら木目細やかに対応することが可能となる。

以上 10回にわたり、ポストCRM を読み解く 10 のキーワードをご紹介してきた。CRM の功績は、顧客の重要性を気付かせ、詳細な顧客理解と、関係構築の必要性を知らしめたことである。あとは、どのようにそれを実現していくか - CRM は次のステージに移って来ているのである。

この記事は雑誌 『チェーンストアエイジ』 (2007年9月15日)に掲載されたものです。

コミュニケーション手法の大別

コミュニケーションの手法には幾つかの分類が存在する。以下にその大別を示す。

シングルステップとマルチステップ
自社が顧客に対してコミュニケーションを行なうとき、その手法はシングル(単一)ステップ型のコミュニケーションと、マルチ(複数)ステップ型のコミュニケーションに大別される。シングルステップ型は、単一の案内で購入やその他の期待する結果を導くことになる。従来的なキャンペーンの多くはここに属し、単発の案内で成否が完結することになる。

これに対してマルチステップ型は、コミュニケーションの内容やチャネル、タイミングを複数に分け、顧客の心理的高揚と誘導を試みることによって最終的に期待する結果へと導く方法である。このような方法は金融商品のような、比較的購入に複雑な心理と吟味を要する商品の購入に用いられる。データベースから対象顧客をリストアップしてコールセンターから架電し、商品に関心を抱いた顧客にはカタログを送付したり、渉外担当者に連絡を入れさせたり...といった形で時間とチャネルを連携させることになる。例えば TVCM で検索画面に言葉を入力させ、自社の Webサイトへ誘導し、購入を促すようなアプローチもマルチステップである。識別可能な個人が対象ではないが、TV > 検索ポータル > 自社 Webサイトと見込み顧客を誘導することによって、広く浅く興味を喚起できるチャネルから、より詳細な情報を提供可能なチャネルへの誘導を試みている。

また、スケジュール化された定期的なコミュニケーションも、マルチステップ型の一種と言える。マンスリーレターやメールマガジン等がこれに該当する。もっとも、このコミュニケーションにおいて複数のキャンペーンが乗り合わせることも考えられるため、このようなコミュニケーションはよりチャネルとしての意味合いが強いコミュニケーションと言えよう。

プッシュとプル
シングルステップ、もしくはマルチステップにおけるそれぞれのステップは、プッシュ(企業から個人へ)型、もしくはプル(個人から企業へ)型に大別される。プッシュ型とは企業が起動させるコミュニケーションであり、例えば「3月10日に配信」といった形で定義づけられる。これに対して狭義のプル型は顧客からの注文要求や、問い合わせが起動させるコミュニケーションである。前述の場合、顧客がそれを求めていることが明確だが、そのような予兆、サインを識別するような「広義」のプル型も存在する。これには、顧客行動上のイベントを検知し、それに基づいてマーケティングを行なうイベント主導型マーケティングが該当する。

また、脊髄反射的なマーケティング手法もプル型に含まれる。Webサイト上にリコメンデーションモデルを実装し、クリックした商品に関連する商品を表示させる例は、この典型例である。脊髄反射と表現したが、この例においてクリックされたデータは直ぐにはデータベースまで行き着かない。事前にデータを分析しておき、単一の変数(クリックした商品)がインプットされれば、アウトプット(リコメンド商品)が案内されるようなモデルを構築しておくことになる。そしてモデルはチャネル側に配備され、顧客行動に基づいてモデルが作用することになる。このような手法は Webサイトだけでなく、ATM やキオスク端末のようなセルフサービス・チャネルでも適用可能であり、また企業と顧客が同じ時間を共有するようなチャネルにおいても適用可能である。コールセンターはその一例として挙げられる。注文商品や問い合わせ内容は電話口からコールセンターのエージェントへと伝えられ、エージェントは自分が見ている画面にそれをインプットする。そこから先の世界は前述の Webサイトと同じである。出てきたアウトプットが、電話口の向こう側にいる顧客へと案内されることになる。

以上がコミュニケーション手法の大別である。マーケティング担当者は実施するキャンペーンの内容に基づいて、適切なコミュニケーション手法を選択することになる。

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