ホーム > ライブラリー > Teradata Insight > ポストCRMを読み解く10のキーワード >第5回: 生活ステージ
山本 泰史
マーケティング統括部
マーケティング部 スペシャリスト
今回のキーワードは、顧客視点に基づいたセグメンテーション分類の 3つ目、「生活ステージ」である。前回までで、「生活シーン」、「生活スタイル」に基づいたセグメンテーションについて言及してきた。「生活ステージ」は、これら 2つにも影響を与えることになる。生活ステージは、社会や、他者との関係性に基づいた位置づけや役割を規定する。生活ステージそのものが行動範囲を規定するが、それと同時に、生活シーンや生活スタイルにも間接的な影響を与えることになる。以降このセグメンテーション分類を概観する。
役者はある特定の「役」に扮し、舞台の上で劇を演じる。例えば能楽では仮面をまとい、ある架空の人間になりきってその役を演じることになる。このメタファーを用いているのが生活ステージ、もしくはライフステージと呼ばれる概念である。生活ステージの典型例として、乳児、幼児、小学生、中学生といった成長過程が存在する。また成人すれば会社員、自営業者、フリーターといった職業形態、または主婦、定年後の引退といった生活ステージも存在する。また会社員でも、新入社員というステージと、会社役員というステージでは趣が異なる。また同じ人間が「優しい祖父」の顔と、「威厳のある会社役員」の顔を持つこともあるだろう。
前述のメタファーを用いるならば、人は幾つかステージを、それぞれに異なる仮面をかぶって演じることになる。それを定義して分類を構築するのが、生活ステージの根底をなす考え方である。
生活シーンや生活スタイル同様、顧客がどの生活ステージを体験しているかは、様々な商品やサービスの購入に大きな影響を与える。またその体験の中に自社の商品を位置づけられるか、体験の中の位置づけを想像させるメッセージを案内できるかが、このセグメントを理解する目的となる。例えば小さいお子さん、つまり幼児がいらっしゃる顧客群を考える。お子さん自身が何か商品を購入することは無いが、その母親はお子さんの生活ステージに大きく影響を受けることになる。
このとき想定すべき生活体験は「育児」である。購買の場において、育児にまつわる様々な側面が想定できる。感覚的側面(この紙オムツの使い心地を、直接触れて確かめてください)、情緒的側面(お子様の成長をこんな風に記録しませんか)、思考的側面(冊子「お子様の健康と衛生を守るためのチェックポイント」)等、母親が関心を持つテーマに基づいて訴求がなされる。当然ながら最終目的は関連商品の購入だが、このセグメントに対して直接的に関連商品の購入を促すのと、このような体験の中に商品を位置づけるのでは、訴求力が全く異なってくる。
人はときに、ある特定の生活ステージから、別の生活ステージに移行することになる。もちろん、必ずしもあるステージから次のステージに移る訳ではない。生活ステージセグメントの特定に大きな影響を与えるのは、年齢と性別である。しかしながら特に現代のように多様化する世界においては、同じ年齢、同じ性別であってもまったく異なるステージに属する場合は考えられる。一方、前述したような乳児、幼児、小学生、中学生といったステージ移行は、極稀な例外を除いて必ず発生することになる。このようなステージの移行タイミングはどのように識別できるだろうか。また、マーケティングの観点から考えた場合、このようなステージ移行がもたらすのは折角識別したセグメントからの流出を意味するのだろうか。
積極的に考えれば、ある特性の生活ステージセグメントから、別の生活ステージセグメントへ移行する場合、それは大きなビジネスチャンスとなる。その人は今 までと異なる行動様式を持つようになり、それによって必要になる商品やサービス、利用可能な金額が異なってくるからである。生活ステージの移動を示す象徴 的な出来事の例が、ランドセルの購入である。これはお子さんが(もしくはお孫さんが)小学校に入学するという兆候である。これに伴って様々な文房具や衣類 の需要が想定される。また成長のためには食費支出も増大するだろう。
このように象徴的な顧客行動は、イベント(発生事象)と呼ばれる。イベントはランドセル購入のように明確なものから、離反を想定させるような極めて検出しにくい微細なイベントまで、様々に存在する。次回は、このイベントをトリガー(きっかけ)としたマーケティング手法をキーワードとして取りあげる。
この記事は雑誌 『チェーンストアエイジ』 (2007年6月15日)に掲載されたものです。
企業がセグメンテーションを幾つか構築し、それをマーケティングやその他の事業施策に適用していく上において、そのセグメントの管理と評価が必要になっていく。ここではそのポイントについて説明する。
まず構築したセグメントの管理方法だが、一般にプロファイルを管理し、そこに属する顧客を入れ替えていく方法と、顧客に対してセグメント番号を付与し、ある決められた顧客群をセグメントとして管理していく方法、そして補足的に、セグメント番号を履歴で管理し、セグメント間の移動を管理していく方法が存在する。プロファイル管理の場合、例えば化粧品買上金額年間 30万円以上といった基準が存在するのみである。この場合、データベースに問い合わせたタイミングによって合致する顧客は変動することになる。このような手法はセグメンテーションだけでなく、特定キャンペーンにおける対象顧客を選定する作業(ターゲティング)に良く用いられる。
これに対して、セグメント番号を付与してしまい、顧客がずっとそのセグメント番号を背負っていくケースも存在する。例えば「2006年 4月入社の新入社員」というセグメントをある百貨店が構築したとしよう。彼らは最初のうちこそいわゆるリクルートスーツを着こなすことになるが、そのうちに自分の趣味や周りのファッション、その時々の流行に左右されながら、スーツや靴、シャツやネクタイを購入することになる。そのうちに離反していく顧客ももちろん存在するだろうが、ある一定年数は同一のマインドセットや同一の年収規模を持つ世代として理解に活用できる。このときには、はじめに各顧客へと付与したセグメント番号を維持しなければならない。
また、付与したセグメント番号を履歴として保持する場合も存在する。RFM 等のセグメンテーションでは良く用いられる手法で、例えば「M値が昨年まで良好だったにもかかわらず、今年度は落ち込んでしまった顧客」は、離反顧客として識別されることになる。このようなセグメント間の移動は消費行動の変化と捉えられ、ビジネスチャンスでもあり、リスクでもある。同様のことは他のセグメンテーションにも適用可能である。幼児向け商品を購入している顧客は「幼児世帯」セグメントとして認識され、この顧客がランドセルを買った段階で「小学生世帯」セグメントに移動する。そしてその年の 4月から 6年間は「小学生世帯」セグメントとして管理されることになる。
続いてセグメント評価方法について触れる。当然ながらセグメントには顧客が属している。何名の顧客が属しているか、そしてどの程度の売上貢献度を有しているかを理解できれば、そのセグメントがどの程度自社にとって重要なのかを理解することが可能である。また、セグメントの平均支出額、平均来店回数/期間、購入商品の偏り、利用チャネルや利用タイミングの偏り、離反率、価格感応度、キャンペーン感応度等が理解可能であり、これらによってセグメントがどのような特性を持っているかを理解できることになる。