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ポストCRMを読み解く10のキーワード

山本 泰史
マーケティング統括部
マーケティング部 スペシャリスト

第4回: 生活スタイル

顧客の視点に立ったセグメンテーションの分類として、前回「生活シーン」に基づいたセグメンテーションの考え方をご紹介した。これに続いて今回は、「生活スタイル」に基づくセグメンテーションの考え方を取り上げる。

生活スタイルの定義

生活スタイルという言葉よりも、ライフスタイルという言葉の方が、馴染みやすく聞こえるかもしれない。しかしながら一方で、ライフスタイルという言葉が持つイメージは抽象的で、おそらく人によって定義はまちまちであろう。別に新たな定義を追加したり、他の定義を否定したりするつもりは無いが、ここでは、顧客が自身の生活において守るべきと考えている「形式」と定義付けることにする。

形式は、個人が持つ性格や特徴、そして嗜好性に起因している。さらにこれは、パターンを生み出すことになる。ある生活シーン、例えば朝のあわただしい風景を考えてみよう。寝坊助で朝起きるのが辛い人にとって、時間をかけずに簡単に朝食を採れることは重要となり、機能的で燃料補給的な食品が必要と言える。一方で早起きの方にとっては、優雅に朝食を採るための上質なベーコンや 100%オレンジジュースの方が好ましいかもしれない。同じ早起きの人でも、日本食派の人にとっては、味噌汁と納豆がマストアイテムとなるかもしれない。

直接的に性格や特徴、そして嗜好性をデータとして捉えることは出来ないが、これらの購入商品から、それらをうかがい知ることは可能であり、それを元に好む商品と好まない商品を選り分けることは可能となる。もちろん寝坊助の人が夕飯に納豆を食す可能性も、日本食派の人がオレンジジュースを飲む可能性も大いにあるため、それほど明確には分類できないであろう。しかしながら購入商品とその頻度やボリュームから、その強弱は透けて見えることになる。

生活スタイルはパターンを描く

このような形式は、よほどその個人の価値観を変えるような事態が起こらない限りにおいて、変わることは無い。このような価値観を変える事態は「生活ステージ」間の移行を意味するが、それは次回ご紹介することにして、ここではそのパターンに着目しよう。前述の日本食派の人にとって、納豆は毎日食卓に上がらなくてはならない。一方で納豆の鮮度も存在するため、少なくとも週に数回は納豆を購入することになる。このとき納豆はリピート性の高い商品として位置づけられ、来店を牽引する要素の 1つになる。

このように定期補充的に購入される商品が存在するのであれば、この商品を基準に日々の購買が廻ることになる。例えば、同一の生活スタイルに属することが想定される商品であれば、クロスセリングを行なうことも考えられる。納豆と一緒に食すもの - タマゴやネギはもちろん、幾つかの商品が考えられよう。筆者の出身は茨城県北部だが、幼少の頃からキュウリ、ニンジン等をすりおろして、納豆と一緒に食する習慣がある。

もちろんこのような傾向を、1人1人つぶさに見る必要はない。詳細な分析は必要になるが、基本的にはリピート購入される商品とその背後にある生活スタイルを理解し、実際にリピート購入している顧客を識別してセグメントに登録することによって、これらの顧客を管理していくことができる。詳しく見ていけば、例えば平日は機能的朝食、週末は日本食派といった傾向を持つ顧客も見出せるかもしれない。生活スタイルは共存しうるものであり、同じ人間でも複数のスタイルを持つことは充分に考えられる。また、リピート購入が発生しなくなったときには顧客の離反可能性を考えなければならない。

マーケティング効率への寄与

生活スタイルはマーケティング担当者に別な視点も与える。おそらく日本食派の人にとって、ベーグルやバターは必要ない。おそらく押しても引いてもリピート購入はしないであろう。たまに気が向いて購入し、食すことはあるかもしれないが、それに注力するほどのものではない。

生活スタイルの考慮によって、マーケティングの効率性を維持することが可能となる。無駄なアプローチをしなくて済むようになるのである。割引クーポンや電子メールの案内メッセージにおいて対象となる商品は、その顧客が持つ生活スタイルに収斂することになる。これは顧客の本質的関心に従順なアプローチを実現すると共に、顧客にとって無用なコミュニケーションを排除することにもなるのである。

次回はセグメンテーション分類の 3回目、「生活ステージ」を見ていく。

この記事は雑誌 『チェーンストアエイジ』 (2007年6月1日)に掲載されたものです。

データマイニングによるセグメンテーション

セグメンテーション・プロファイルの構築には、マニュアルで人間が作成する方法もあれば、データマイニングによってシステマティックに導き出す手法も存在する。ここでは、データマイニングによるセグメンテーション手法を俯瞰する。データマイニングによるセグメンテーション・アルゴリズムとして一般的なのは、「クラスター分析」と「決定木」の 2つである。

クラスター分析は、各顧客が持つ変数値を把握し、変数値が同じもしくは近似の顧客を同一のグループ(クラスター)へ、変数値が全く異なる顧客を異なるグループへと分類する手法である。イメージで言えば、変数値の違いを与えられた距離とみなし、距離の近い顧客を同じグループへ、距離の遠い顧客を異なるグループへと分類することになる。距離で単一変数を考えた場合、その変数値分布は一直線上に展開することが可能である。従って顧客毎の変数値分布を見れば分類可能となる。同様に 2変数のときには、縦軸横軸の 2次元座標、3変数の時には立体の 3次元座標の中に顧客を分布させることが可能となる。クラスター分析では複数の変数値を N次元の分布としてみなし、分類を行なうことが可能となっている。このような分類を論理的に、人間の色眼鏡や先入観を介することなく得られるのがデータマイニング手法を用いる価値である。

これに対して決定木は、与えられた変数群の各変数値に対して、分類後の顧客グループの純度、同質性を最大化するような分類基準値を決定するアルゴリズムである。このような分類基準値の設定を分類後の顧客データに対して繰り返し、純度、同質性を増加させていくことになる。結果、この分類基準値を元にそれぞれの顧客は枝分かれしていくことになり、この様が「意思決定の流れを意味する根から枝葉の分岐」に喩えられることから決定木(英語では Decision Tree と呼ぶ)という呼び名になっている。

クラスター分析は直接的にそれぞれの顧客に対してクラスター番号を割り当てるため、その選定基準やセグメントの意味を人間に教えてくれることは無い。与えられたクラスター番号を元に顧客をグループ化し、幾つかの変数を見比べることによってセグメントの意味を類推することが可能となる。しかしながら得られたセグメントは全体観に基づいており、極めて全体最適に基づいた分類となる。これに対して決定木は、分類基準、もしくは分岐条件と呼ばれるものがセグメントを分ける境界線になるため、どの選定基準が強力な基準なのか、またどのような基準によってグルーピングされているのかを理解することが可能となっている。最適なセグメンテーションを導くためには、マニュアルによるセグメンテーションと共に、このようなデータマイニングの手法を利用することが可能である。
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