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ポストCRMを読み解く10のキーワード

山本 泰史
マーケティング統括部
マーケティング部 スペシャリスト

第3回: 生活シーン

顧客の視点にたってセグメンテーションを行う上で、顧客の生活をうまく切り取ることは重要となる。前回の連載ではセグメンテーションの対象を「生活シーン」、「生活スタイル」、「生活ステージ」の 3つに分類できると記した。今回はこの中からまず、「生活シーン」に基づいたセグメンテーションに焦点を当てる。

生活シーンとは何か

人は 1日 24時間の間に様々なコトを行う。例えば朝の風景を思い浮かべれば、朝起きて歯を磨き、シャワーを浴び、今日着る服を選び...と続いていく。もちろんそれは日毎に様々であり、個人毎に様々なのであるが、その中には共通する部分が存在し、端的にはこれが生活シーンとなる。そして注目すべきは、それぞれのシーンにおいてちょっとした商品やサービスが必要となるという点である。そこに自社の商品を位置づけることができれば、それは極めて自然な商品の購買理由となる。顧客がシーンを体験する上での必然性があるならば、その商品はシーンを形作るパズルの 1つなのである。

例えば今ではどの食品スーパーでも、ペットボトルのお水を宅配してくれるようなサービスを行なっている。充分な駐車場を有する郊外型の食品スーパーであればあまりニーズはないかもしれないが、駐車場を用意できない都心や住宅地に隣接している食品スーパーの場合には重宝する。このようなサービスの背景に存在するのは、顧客が重いペットボトルを自宅まで運ぶ「シーン」である。データと想像力の両方を用い、いかに多くの、そして鮮明な「シーン」を定義でき、対応する商品やサービスを提供できるかが、ここでは鍵を握るのである。

生活シーンは日常に限らない

ご紹介した朝のあわただしい風景やペットボトルを運ぶ姿は、極めて日常的な「生活シーン」である。しかしながら生活シーンは日常的なものに限らない。半日常、非日常的なものも生活シーンに含まれ、同様に何らかの商品やサービスがスロットされる。例えば、目覚まし時計の電池切れ、急な自動車事故とそれによる入院、友人の結婚式...これらは、頻繁に起こるものではないが、時に起こることが想定でき、そのために顧客は、電池の予備を準備し、自動車保険と傷害保険に加入し、白いネクタイを準備することになる。これらは日常的とは言えないまでも、全く起こらないとは言えず、そのため強いて名前を付けるのであれば「半日常的な」生活シーンであるということになる。そして、これがもっとレアケースとなれば、それは非日常と言うことになる。考え方は同じで、例えば「家族で行く海外旅行」というシーンに対して、スーツケースや旅行グッズ、クレジットカード等、様々な商品やサービスが必要になる。

シーンの切り取り方

では、このようなシーンは、どのように切り取ることが可能だろうか。そしてその主役となる顧客は、どのように識別し、分類することができるだろうか。またそれをどのように企業活動へと活用することが可能だろうか。

例として、「寒い冬に家族が囲む暖かい夕食」セグメントを考える。このようなアイデアを導出するには、1つには想像力や情報収集力が必要であり、同時にそれをデータで定量的に捉えなおすことが必要になる。まず、家族が夕食を一緒に過ごすという点からは、世帯人数が 3名以上と想定できる。世帯人数が 4-5人程度であれば、想定として両親とお子さん 2人になるだろうか。それともお子さんは 1人で、お子さんからみた祖父母の方もいらっしゃるだろうか。会員カード申込時に記入いただいたデータから世帯人数は理解でき、ある一定の年齢に特に反応する商品の購入有無を見ることによって世帯を構成する年齢層を類推することができる。また、暖かな夕食を飾るのは、シチューかもしれないし、お鍋やすき焼きかもしれない。暖かい食べ物に合うのはビールかもしれないし、ワインの方が良いかもしれない。お子さんにとっては食後の冷たいフルーツが好まれ、母親にとってもそれは好ましいかもしれない。

これらは提案すべき商品群であると同時に、過去の購買、特に冬の寒い時期における購買において、よく散見される商品群である。従って、これらの購入商品とそのタイミング、そして世帯人数をプロファイルとして利用すれば、この生活シーンが数多く発生する顧客群を識別することが可能となるのである。

次回のキーワードは「生活スタイル」。今回同様、このセグメンテーションの持つ特性について説明をしていく。

この記事は雑誌 『チェーンストアエイジ』 (2007年5月15日)に掲載されたものです。

セグメンテーション・プロファイル

顧客セグメントの構築を考えるとき、その定義付けは顧客の選定基準(英語では Selection Criteria)、もしくはプロファイルと呼ばれる。顧客は様々なデータによって説明され、それらは変数、指標、属性等と呼ばれる。例えば性別も年齢も買上金額も変数であり、指標である。セグメンテーションは、この変数に条件設定を行い、それぞれを AND もしくは OR条件で結びつけることによって出来上がる。以下に例を示す。

・性別 = 女性 (AND)
・年間買上金額 > 100万円以上 (AND)
・主来店時間帯 = 平日午後

この単一のセットが選定条件であり、プロファイルである。プロファイルという言葉に関して補足をすると、元々はそれぞれの顧客がどのような変数値を保持しているかを意味している言葉である。お医者さんが用いるカルテのようなものであり、それによってあらかたを説明できるのが顧客であるということになる。セグメントに関しても考え方は同じで、指定された変数と変数値に対する絞り込み条件が、そのセグメントを説明する「プロファイル」となる。

上述の例において、性別は会員カード申込時に得られた情報を利用する。これに対して 1年以上の取引関係が存在していれば、直近 1年間における買上金額合計を集計することによって、各顧客の買上金額を算出することが可能である。これは理解したいセグメントによっては必ずしも総額である必要は無く、例えば来店購入 1回あたりの平均購入額で考えても、購入額から販売経費や商品原価を差し引いて利益額を見ても良い。また、特定商品カテゴリーに対する買上金額も考えられる。そして最後に用意したのは、過去の来店曜日と、来店時間帯を元に決定した指標である。同じ顧客でも必ず同じ曜日、同じ時間帯に来店するとは限らないが、パターンが大体において決まっている場合もある。例えば総来店回数のうち 50%以上が、月曜日から金曜日における 13時から 17時の間であれば、この「平日午後」という変数値が当てはまることになる。同様に平日夕方、休日、パターン無し等の変数値も想定できる。このような形で、それぞれの指標がどのような値をとり得るかを指定し、AND条件で絞り込むことによって、この条件全てに合致する顧客が導き出されることになる。セグメンテーションとは結局のところ、このプロファイルを作成して、顧客の姿を切り取り、描き出す行為なのである。
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