ホーム > ライブラリー > Teradata Insight > 団塊の世代が見た小売業システム > 「第8回(最終回)」動機付けと "情報"/恩師 2人

岡本 正昭 (おかもと まさあき)
流通ソリューション事業部
エグゼクティブ・コンサルタント
最終回の今回は、次の 2つのテーマについて話す。
・経営観点で見た情報の意味を考える「動機付けと "情報"」
・最後に、これまでの私を作っていただいた多くの方々の中から特に恩師と呼べる方の話で「恩師 2人」
1. 経営における動機付け
私は、経営するということの最大ポイントは動機付けであると思っている。これは小売業に限らず、あらゆる企業に共通のテーマであるが、特に小売業の場合は動機付ける相手が非常に多数になるので大事なポイントになる。
小売業では、経営者が行う動機付けの主な対象は以下のようになる。
顧客に「A店のために私は応援したい。声を伝えたい。」と思っていただくにはどうするか?
株主に「A店の株を買って、お互いにハッピーになりたい。」と感じていただくにはどうするか?
取引先に「がんばっている A店にいい商品を廻したい。うちの商品は A店の顧客に買って欲しい。」と思っていただくにはどうするか?
そして、社員に「会社のためにがんばってみたい。」と少しは思ってもらうためにはどうするか?
2. 動機付けの手段としての "情報"
動機付けのためには対象に応じて色々な手段が考えられる。特に金銭的な手段は効果的であろう。対顧客としては安い価格のアピール、対株主では配当増額、取引先にはロットをまとめた仕入、社員にはベースアップや臨時ボーナスなどなど。また、自分が一生懸命であることを見せると、社員が動機付けられると思っている経営者やマネージャーも多いと思う。しかし、もっと根源的に、かつ共通的に人を動かす手段がある。それは "情報" である。人間は知らないことには気持ちを動かされないが、知ってしまうと我がことのように気になってしまうというところがある。会社を例に取ると、あるマネージャーが部下を集めて「もっと成績を上げろ!」と発破をかけながら、会社や部の実態を、「これがばれると、部下はやる気をなくす。」とか「競合他店に漏れるとまずい。」と考えて部下に知らせないとしたら、部員はやる気をおこさない。危機を我がこととしてとらえない。
情報を出来る限り公開し共有することが、動機付けのためには非常にコストパフォーマンスの高い手段なのである。ここで言う"情報"は人間的に発信される情報提供機会、例えば店長を集めての店長会、現場での朝夕礼などもあれば、システムが提供する場合もある。「社長と自分が同じ情報を手にしている。」「部長は情報を隠していない。」という状態は社員を大いにやる気にさせる。取引先も駆引きばかりでなく、小売業と互いに実態情報を交流できる状態になれば自然とその小売業の支援に時間を割くようになる。「データウェアハウス」という難しそうな名前の概念も、本質的にはこの情報共有のための究極システムであるといえる。
3. "情報" 発信で注意すべきこと
とはいえ、どんな情報もただばら撒けばよいというものではない。以下のことが大事である。
効果的に見せるとは、例えば全体との対比で見せるとか、計画との対比で見せるとか、これまた色々な工夫があると思う。自分の見たい形を自ら作って、情報を取り出せるようにするのも効果的である。出来合いの Excelフォームより、自分で作った Excelフォームのほうに愛着があり、改良をし続ける・・というのと同じである。
担当者以外に見せてはいけない情報の代表は、具体的な顧客個人にかかわる情報である。
ここで、第1回目の私の履歴書では語れなかった恩師2人の話を書きたい。定年まで勤めてこられたのは多くの方々のおかげであることはもちろんであるが、特にビジネス社会で私が楽しく仕事をすることができたのは、このおふたりのおかげだと思う方々の話をするわがままを許していただきたい。残念ながらおふたりとも故人である。
1. 新谷隆一先生:
私の大学4年生の研究指導の先生で、実験物理の指導をいただいた。一般的には大学の先生は大変なその道の権威であるが、新谷先生はそういったそぶりはまったく見せず、私には兄のように付き合っていただいた。例えば、オシロスコープ画面を毎日カメラで写真にとっている私の横に来てカメラの話をする。カメラ趣味の私のほうが詳しかったりすると「ふん、ふん」とまじめに聞いてくださる。漫画のような絵入りで枚数も少ない私の卒業論文も楽しそうに見ていただいた。研究生が集まって何かを議論していると、まじめな研究の話ではない雑談でも「なんや、なんや」と首を突っ込んでこられる。(関西の学校でした)
先生からは何にでも興味を持つあくなき好奇心と、権威ぶらないフランクな態度を学んだ。ほんの1年お世話になったことが、後年の私に永く影響を与えたと思う。
2. 御代秀彦先輩:
NCR に入社して小売業の仕事をすることになった当時、会社の中で最も小売業(と少しだけそのシステム)に詳しいと思われる御代(みよ)さんの部下のひとりとなった。もっとも、それがわかったのはずっと後のことで、初めは変わった人が会社にはいるものだと感じた。その後何年かして、再び御代さんの部下として何年か過ごすことになったが、小売業そのものや、コード体系の話、情報の使い方に関してはまったく熱心で詳しい方であり、そばで仕事をしているだけで勉強になった。日本の SC(ショッピング・センター)の立ち上げや、日本の百貨店の POS化には多大な貢献をされたと思う。日本全国の百貨店の細かい情報一覧が頭の中に全て入っていて、1日で表に作成されたのを見たときには驚いた。ローカルのお店も書かれていて、ほとんどが当時の私の知らない店舗であった。また、一緒に出張してわかったのは、寸暇を惜しんで、地元のお店を見てまわることを楽しみとされていたことである。
非常なアイディアマンで、次々と新しい資料や、システム化案を出された。ユーザーにも社内にも信奉者が多かった。今日私は、小売業の方を前にしてプレゼンテーションすることが多いが、その大半は御代さんから有形無形に教えてもらったことをベースにしている。
今回でこの連載は終了です。長い間お付き合いいただいて有難うございます。タイトルに比べ、小売業システムではない部分も多くなってしまい、申し訳ありませんでした。
永年日本NCR でやってまいりましたが、この 9月に分社化し日本テラデータとなりました。今月定年を迎えましたが、当分は日本テラデータ株式会社で仕事をさせていただきます。2005年から合計 3シリーズの連載を書きましたが、時々、外でお会いした小売業の方から「連載みていますよ!」と言っていただくことがあり、筆者としてはおおいにはげまされました。有難うございました。
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