ホーム > ライブラリー > Teradata Insight > 団塊の世代が見た小売業システム > 「第5回」情報を見る目/お店を見る(1)

岡本 正昭 (おかもと まさあき)
流通ソリューション事業部
エグゼクティブ・コンサルタント
今回は、次の 2つのテーマについて話をする。
・小売業の方が情報を見るときに、どう見て判断するべきかという例をいくつか紹介する「情報を見る目」
・システムベンダーの方々が小売店舗を見学するときのヒント「お店を見る」
小売業の方々が情報(多くは数字)を見るときのポイントを、いくつかの観点で述べる。特に統一性はなく、思いつくまま並べる。
1.顧客の購買情報を見るとき
・昨今は CRM が注目されて実践もされているが、当然その中には顧客の過去の購買情報を見たい、活用したいというニーズも高い。
・しかしここにいくつかの注意が必要である。
1. IDコードの付いた顧客のみを見ると、判断を誤るときがある。
例えば IDコードの付いた顧客を分析して、宝石が昨年の 2倍売れたとしよう。さあ今年は宝石の仕入に力を入れようと簡単に判断したが、実は ID に関係なく全顧客で見ると、宝石は昨年のマイナス 5%の売上だった・・ということもある。
2. 購買情報を当該の顧客へのアプローチにあからさまに使うと、拒否反応を呼ぶ。
「先月お買上いただいたアクセサリーはいかがでしたか?」
と過去情報を見て顧客に話しかける・・・一見良いことのようだが、顧客からすると「このお店は私の行動を全部把握しているのか。うかつなものは買えないな」となってしまう。プライバシーに踏み込んでいないように見えながら実はよくわかっている、というバランス感覚が大事で、かつ顧客から見るとどう見えるかという「想像力」が大事である。
2.営業の成果情報を見るとき
・従来の会計的観点での営業実績把握や予算管理には問題が多い。会計のための数字が、実は現場のビジネス、特に MD (マーチャンダイジング)と、かけ離れてしまっている場合が多いからである。
・例えば「発生売上」「計上売上」の使い分けもそのひとつである。従来の管理会計では売上は「計上売上」であるべきだ・・となっている。例で説明すると、7月8日(日)に紳士服のイージーオーダーを 4万円でうけたまわって、7月25日(水)に仕立て上がったものをお渡し、4万円入金いただいた場合、「計上売上」ベースでは紳士服イージーオーダー部門の 7月25日に売上が加算される。このデータは今後ほとんど役立たない。役立つのは、7月8日の日曜日にたくさん売れた、その中の 4万円の売上である。これを「発生売上」という。翌年になって、7月の紳士服イージーオーダー売場の仕入計画や売場展開計画に役立つのは「発生売上」なのである。何曜日にたくさんお渡ししたのかが重要ではない(まったく意味がないわけではないが)。
となると、MD情報として「発生売上」が把握できていることがまず大事であり、次ぎに管理会計自体「計上売上」ベースでよいのかという見直しも必要になるかもしれない。
・もう一つ例を挙げると、多くの小売業で実施されている売価還元法による原価把握/利益把握にも問題が多い。これも会計的観点で許された原価・利益把握方式ではあるが、MD的に見るとまったく平均的な原価率を使った仮想的な利益把握にしかなっていない。同じ 1個売っても、こちらの商品は儲かるが、そちらの商品は儲からない、ということを意識するという商人の原点を自ら捨てているようなものである。本来は商品の個別原価を把握できる仕組みが必要なのである。これは必ずしも単品原価管理を意味するものでもない点に、注意が必要である。
3.プラスライン分析をするとき
・プライスライン分析は MD情報分析の一つである。ダラコン(営業情報管理)の分野ではない。
・消費者に対する価格表示が税抜き額でよかった時代から、税込み総額表示に変わるとき、いくつかの小売企業のシステム担当の方に「総額表示で情報出力が変わって大変ですか?」と質問すると「いや、結局は税抜きで情報は見ればいいのであまり変更点はない」という答えが多かった。そこで「でもプライスライン分析は税込みにしないとまずいですよね?」と追いかけると、反応は 2つに分かれた。「え!なぜ?税抜きでいいじゃないの」か「そうだね、気付かなかった」のどちらかであった。このこと、つまり総額表示時代にはプライスライン分析は税込みでしないといけないという点は、MD上はずせないことだと思う。そもそも何のためにプライスライン分析をするのかというと、消費者がどういった価格に反応しているかを知りたいという点から出発している。消費者は値札を見て、これなら買う/買わないと判断するのだから値札の価格、すなわちこれからは総額で分析しないと意味がない。消費税分は我々の売上ではないので・・・というのはまったく消費者視点で見ていないことになる。
・総額表示のことで思い出すのは、日本に消費税(当初売上税と呼んでいた)導入が決まったときのことである。小売業界では、どう価格表示し、どう POS処理するかが大問題になり、各社、各業界で大いに議論された。当時の私の主張は「値札、POS処理ともに税込みでされるべきである」というものであった。その理由は消費者にわかりやすい、また消費者に支払いやすい方式であるからであった。この消費者にわかりやすいという点も、当時、税額分は我々が取っているのではないよと明示したいという小売企業側理論に押し切られ、外税方式で流れが決まった。最近になって結局消費者にわかりやすい総額表示に戻ることになり、制度改変のため日本中で無駄な経費が発生してしまった。