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団塊の世代が見た小売業システム

岡本 正昭

岡本 正昭 (おかもと まさあき)
流通ソリューション事業部
エグゼクティブ・コンサルタント

第4回:「前向き」と「慎重」/何か得るものがある

今回は、次の 2つのテーマについて話をする。
・前回の続きで、システムベンダーとしての姿勢 “「前向き」と「慎重」”
・ビジネスマンの心得 “何か得るものがある”

「前向き」と「慎重」

企業にシステムを提案して納めていく上で、システムベンダーには「前向き」な面と「慎重」な面の一見相反する面が求められる。これが一方に偏りすぎても良くない。例えば、ひたすら前向きで楽観的な見方しかしないベンダーは、そのシステムが持つ副作用や欠点を自ら見失っている場合が多い。いわく、このシステムを入れれば何でも解決しますよ・・。一方で、慎重すぎるシステムベンダーも困りものである。こういったベンダーの提案には夢がなく、やたらと時間やコストが掛かる開発になってしまう。システムベンダーが前向き、慎重双方をバランスよく持つことは、ベンダー会社として、また担当者個人としても結構難しいテーマである。前向き人間から見ると、慎重人間は消極的でビジネスの足を引っ張るやつだ・・となるし、慎重人間から見ると、前向き人間は信用の置けない危なっかしいやつだ・・となっている。実は同じ人でも場面ごとに両面の使い分けが必要なのである。

なお、ここでは「前向き」「慎重」は良い意味で使っている。わかりやすく反対語をあげると「後ろ向き」と「軽率」であり、どちらも悪い意味で使われる。前向きは一歩間違えると軽率となり、慎重は一歩間違えると後ろ向きになってしまう。また、例えば初めて会った人が声を大にして目の前で話しているとき、その人が前向きなのか軽率なのかはなかなか判断が難しい。

1.「前向き」であるべきとき

・システムベンダーはソリューション提案の場や、デモは前向きであるべきである。
・対象客先の将来のビジネス発展を描き、ビジネスにプラスになる要素をシステム化する絵を描く。明るく考える。
・その意味では、現状の不満をちょっと改善するだけのものは提案に値しないかもしれない。
・例えば、そんなことはシステムでは一見無理だと思えることも、何とかならないかと考えて、ぜひビジネス改善に役立てていきたい。
・良いと思ったことは堂々と客先に説明しないといけない。たとえ、客先の想定していることとは異なった方向であっても、まずは自分の(自社の)意見・提案を出さないといけない。

2.「慎重」であるべきとき

・提案内容の事前確認、システム開発、システムのテストなどは慎重であるべきである。
・慎重と消極的とは異なるものである。本当にこれが客先ビジネスのプラスになるのか?問題はないのか?副作用はないのか?と反復的に自問自答しないといけない。つまり積極的に慎重になるのである。
・往々にして、打合せの場で前向き論が展開されているときには、慎重論は出しにくい。こうして慎重無しに出来上がってしまった提案書は、裏付けの薄い提案書になってしまうし、慎重無しに開発されたシステムは、本稼働後に問題を露呈する。前向き論が展開されているときにこそ、慎重論が貴重なのである。
・特にシステムベンダーが陥りやすい落とし穴は「システムで何でも解決できる」という一見前向きな考え方である。一般的にビジネスは、人間的業務や人間心理(現場社員の心理や、消費者心理)によって支配される部分のほうが、システムやマニュアルが支配できる部分より大きい。NCR の創業者ジョン・エイチ・パターソンは小売企業に人間心理学を導入し、店員という人間に通有の欠陥心理を分析している。こういった心理学的要素は今日の MD(マーチャンダイジング)や CRM(カストマー・リレーションシップ・マネジメント)の世界では、消費者心理として位置付けられ、最も基本的な背景要素になっていると思う。消費者心理もまた、慎重に読まないといけない。

何か得るものがある

外部のセミナーを聞きに行く、社内で教育を受ける、ビジネス書を読む・・いずれも、「何の参考にもならなかった。面白くなかった」と感じることは多い。でも、はたしてそうだろうか・・というお話。

もっと具体化すると、百貨店の方が GMS(量販店)の話を聞いて役に立たないとか、システム担当の方がシステムの話を期待していたのに、ビジネスの話を聞いてがっかりしたということもよくある話である。
私の見解は以下のようなものである。

・どんな退屈なセミナーでも何か一つは役に立つ点がある
・どんなつまらない教育コースにも何か一つは役に立つ点がある
・どんなつまらない本にも何か一つは参考になることが書かれている

セミナーで 2時間、教育で 1日、読書で 2日使ったときには、その時間分の何かを獲得しないと損である。 損をしないためには、こういった感想を持つことでも良い。「つまらないセミナーだったよ。どこがつまらないかというと、資料、ストーリー、話し方それぞれにこういう欠点があったよ。自分が話すときにはその点に気をつけよう。」 つまり、問題だらけのセミナーや教育は反面教師となるのである。この、どうにかして自分の役に立てる精神が大事である。

もちろん、通常はここまでひどくはなく、もっと素直に役立つものである。他業界の話も自社や自業界にくらべて、あそこが違う、ここが違うと否定で見るのと、ここは似ているなと肯定的に見るのでは大違いである。こうして段々に広い視野が育ち、人前でわかりやすい話が出来るようになってくる。よくいうところの「聞き上手は、話し上手」である。

もう一つのうまい使い方は、自分が得たものを、さっそく周囲の人や外部の人に話してみる・・ということだ。自分がつまらないと思っていた点に、相手の方が意外に興味を持って反応することもしばしばである。これは考えどころである。「自分がおかしいのか?相手の方が間違っているのか?」またまた自問自答が始まる。

以上、今回の 2つの話に共通するのは「謙虚さ、反省」のない人間は信用できないということである。でもだからといって、「暗い」人間はいやだよ・・といったおまけ付で。

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