ホーム > ライブラリー > Teradata Insight > 団塊の世代が見た小売業システム > 「第3回」先に苦労、後で楽/ユーザーと一緒に悩み、一緒に喜ぶ

岡本 正昭 (おかもと まさあき)
流通ソリューション事業部
エグゼクティブ・コンサルタント
今回はシステム構築や納入の際のシステムベンダーとしての姿勢などを 2点考えてみたい。えらそうな事を書くが、自分自身つい忘れがちなことばかりで、自戒の念をこめて述べることとする。
先に苦労して準備を十分に行っておけば、大体新システムの本稼働はうまく行くし、本稼働の支援も楽である・・・という話である。逆に、まあこれくらいで良いだろう、とルーズな準備をすると、本稼働時に大トラブルになることが多い。これがわかっていてもなかなか上手くいかない。では、事前の準備とは何であろうか?
1.目標や目的設定の重視
・どこにポイントがあるか分からないで、時間をかけてテストや教習をしても、別のところに目的がある場合には、正しい現場理解や経営者理解が得られないままの本稼働突入となってしまう。
・例えば、省力化が目的でなく活用効果(売上や利益増)が目的であるのに、導入現場にそのことが理解されていないと、「今度のシステムは面倒ばかり増えて・・」と不満が募り、自ら情報を使おうとはしない。こうなると、投資ばかりが目立って、効果が出てこないことになる。
・逆に省力化が目的なのに、やけに細かい運用追加を現場に強いて、そのおかげで、従来出ない詳細な情報(でも、使い方がよく分からない情報)が画面に表示されている・・というのも、稼働何ヶ月かすると問題化してくる。
2.事前テストの重視
・往々にして欠けるのは、事前の実際運用的テストである。単にシステムとしてきちんと動くのは当たり前で、システム間を結合し、かつ運用してテストすることが重要である。
・そのためには、ユーザー側で運用のわかる人がテストの主要部を実行しなくてはならない。「テストはシステムベンダーの仕事だ」といった見方で、ユーザー側がテストを他人任せにするのは問題であり、結局は後でユーザー企業が困ることになる。大トラブルとなった時に、「それはシステムベンダー A社のせいだ」と言っても、消費者(顧客)や経営者が納得しない。
・トラブルが発生した際に、「なんだ、そんな初歩的な事をテストしていなかったのか?」とユーザー側がシステムベンダーにクレームをつけることは多いと思うが、一般的にシステムベンダー側は何が初歩的で、何が例外処理的であるかの区別が、明確にはついていない。
3.事前教育の重視
・教育は大事である・・とは誰でも言うことである。
しかし、現実には事前に十分な教育をするための人、時間、システムが用意できないケースも多い。しかし重要なことには変わりがない。
・現実運用に沿った事前教育は、システムの総合テスト的な役目も果たしてくれる。新しい道具(システム)に対し、初めて接する社員がどういう反応を示すかは、他に代えがたい現場情報である。
4.可能な場合は事前運用
・例えば新しい顧客サービスを開始する場合は、事前に社員を対象に運用開始してみるのも効果的である。新カード発行、新インターネットサービスなどでこれが出来れば、問題点の洗い出しやシステム負荷の検証に関するヒント、バッチ処理時間の想定等が行いやすくなる。
・「社員は最初のお客様である」
・大事なことは、社員からの問題指摘に対して説き伏せるのでなく、素直に反省することである。
最終的にはシステムのユーザー企業の発展に貢献することが、システムベンダーにとっての目的でないといけない。短期的に、今回のシステムの受注が成功すれば良いという姿勢でなく、中長期的に見て、その企業のビジネスに寄与できるシステムを提案しないといけない。システムベンダーも真の顧客中心主義でないと、自らの発展も無い。
では、そのためにどう臨むべきかというと、
・ユーザーの抱えるビジネス課題を一緒に考え
・ユーザーの抱える悩みを自分の悩みとし
・ユーザーの喜びを自分の喜びとする
といったことになる。
つまりユーザーと「一緒に」である。結婚式のスピーチではないが「悩みを 2者で共有すれば半分になり、成功の喜びは
2者で共有すると倍になる」わけである。以下に「一緒に」となるためのやり方を考えてみたい。
1.ブラックボックスでないシステム
・一生懸命に努力するシステムベンダーであるほど、提供する自社のシステムを囲い込み、自社にしかわからないようにしがちである。その結果ユーザー側から見ると、システムが「ブラックボックス」になってしまっている。場合によっては、こうしておけば他のシステムベンダーにスイッチされることはないだろう、という浅知恵である場合もある。
・ユーザー企業の使うシステムは、たとえパッケージシステムであっても、ユーザー企業が内容を良く知り、改善を検討でき、改善を実行できる(システムベンダーに指示することも含め)ものであるべきである。
・私が例えて言うのは、ユーザーの方が当該のシステムの事を他人に話す時に、「Teradata のシステム」と表現されるのではなく「うちのシステム」と言ってもらえるようになりたい・・ということである。
2.問題点をユーザーに早期公開
・システム上の問題点(バグや情報漏洩など)が発見された時、システムベンダーは隠すのではなく、なるべく早くユーザー企業にそれを伝えることが大事である。どうしても対策を検討したり、実行したりが優先になりがちであるが、その問題点の影響範囲を知っていてかつ最終責任を負っているユーザー企業に早く伝えないと、採れるべき対策も打てなくなってしまう。
・場合によってはシステムの問題でなく、ビジネス運用上の問題にシステムベンダーが気付くこともあり、これも他人事と考えずユーザー企業に速やかに伝えるべきである。
3.ユーザー企業のビジネスに興味を持つ
・当然のことではあるが、ユーザー企業の経営方針、店舗、商品に興味を持つことも必要である。そのためには、その企業のお店を何回も見、買物をし、できれば株主にもなってみる。報道記事にも注意をする。
・以前、席をもらって仕事をしていたある百貨店で、その百貨店の方がある商品について「何階のどこで売っているかな?」と言われた時に、そばで聞いていた私が「それはxx階のxxの辺りですよ」と口を挟み、驚かれたことがあった。その百貨店に常駐しているときに、時間があると売場を回っていたから出来たことである。
・また、当該ユーザー企業だけでなく、同業態、もっと言えばその業界(私の場合は小売業)全体に興味を持つことも大事で、その中で相対的に、当該ユーザー企業を位置付けてみることで、特徴や課題が浮き彫りになる。