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団塊の世代が見た小売業システム

岡本 正昭

岡本 正昭 (おかもと まさあき)
流通ソリューション事業部
エグゼクティブ・コンサルタント

第1回:団塊の世代である私の履歴書

筆者は昭和22年(1947年)生まれの、まさに団塊の世代である。団塊の世代は第二次世界大戦直後の日本において、1947年から 1949年にかけての第一次ベビーブームで生まれた世代である。

NCR 入社後、一貫して小売業システムに関係した仕事をしてきた。今回は 8回連載で、小売業のビジネスとシステム化に関する私なりのコメントを取り上げる予定である。システムベンダーの若い方々には「こういう姿勢で仕事に取組んできた人間もいるのだなー」と感じていただきたいし、小売業の方々にはシステムベンダーに求めるものの参考にしていただきたい。NCR という最も古くから小売業とともに歩み、ビジネスを支援してきた、個性あふれる IT企業に 37年在籍した私の独断的感覚で書く今回の連載も、一般の見方とはかなり違った視点であるかもしれないが、実際に実践してきたことをベースに書くつもりであるので、お許し願いたい。

まず第1回目の今回は、私の NCR 履歴書を自己紹介する。

就職活動

1970年当時は、70年安保闘争をはじめ、ほとんどすべての大学で学園闘争が行われ、校舎の封鎖なども処々で行われていた。私もノンポリ(ノンポリティカル)であったにもかかわらず、学費値上げ反対の学生集会に連夜参加したこともあった。結局、卒業式も行われないままでの卒業となった。こういった中、史上空前の新卒者数での就職活動は、大変であった。私学卒でも平等に扱ってくれるだろうという安易な期待で、外資系コンピュータ会社 2社の試験を受けた。幸い 2社とも合格し、どちらにしようかという時に、父親が一方の外資系コンピュータ会社(業界ではこちらの方が大手)の名は知らないが、NCR なら優良会社だと良く知っていて、ほとんどそれだけの理由で NCR に決めた。

スタートはSE(システムエンジニア)

昭和45年(1970年)に NCR に入社した時点では、小売業担当のシステムエンジニア職で採用された。当時 NCR では、コンピュータの新しいシリーズを発表したばかりで、これから POS という新しいシステム(型番280)を世界同時発表するというタイミングであった。入社して驚いたのは研究所に缶詰になり、小売業とは…から始まり、レジスター(POSの前身)や会計機、コンピュータの勉強を詰め込まれたことである。あげくの果てにはスーパーマーケットの店舗レイアウトを描くとか、市場調査の調査員もさせられた。結局1年間はまったくの勉強期間であった。大学では実験物理の専攻であったので、コンピュータはまったくの未経験であった上、小売業の実態も知らなかったので、勉強すればするほど不安になったものである。ただ子供の頃からお店で買物をすることは好きであったので、その消費者感覚で、小売業ビジネスを勉強していた。

OJT(On-the-Job Training)で配属された部署では、統計学を勉強しながら、科学技術計算用言語 FORTRAN で需要予測プログラムを組んだ。また、仕事に役立てるためにと婦人服専門店の開催するファッションショーを観に行って、ちょっとしたカルチャーショックも味わった。

大阪時代

2年目には OJT後、大阪に転勤になり、中規模小売企業へのシステム支援の仕事についた。営業担当者に同行して小売企業を訪問したり、会計機のデモをしたり、またシステム納入を支援したりであった。担当したお客様にはファーストフードチェーン、喫茶店チェーン、串かつチェーン、履物店、呉服店、スーパーマーケットと色々な小売業があった。何よりも良かったのは、まだ若造の私にも、経営者(社長や専務)といきなり話せる機会が与えられたということである。素朴に質問する私に、ラーメン店チェーンの社長は原価計算の仕方を教えてくれたし、串かつ店ではお客様の残した串を見ただけで会計のできるノウハウを教わった。

次ぎには、大手 GMS のコンピュータ人事システム稼働にも参加した。当然先輩の下での仕事である。そのころ日本小売業界ではまだ珍しかった、システム開発の外注化を採用していたので、毎朝外注先の報告を聞き、指示を与え、時にはデバッグ(プログラムの誤り箇所を見つけ修正する作業)を手伝ったりもした。岡目八目で、そのプログラムを作った当人より、私のほうが誤り箇所を見つけるのが早かった。このときのプログラム言語は COBOL であった。

大阪時代最後の仕事は、大手百貨店の新店での POS導入の支援である。日本では最初期の POS実用であった。NCR からも多数参加したので私は単に一員であるに過ぎなかったが、POS用のバーコード値札に関しては、ほとんど私の専門となった。

東京でPOSや周辺システムを支援

1974年には、再度の転勤で東京に戻り、今度は暫くの間、POSシステムのサポートを行った。1975年伊勢丹、1976年小田急百貨店町田新店と連続して百貨店での POS稼働プロジェクトに参加した。この頃はやっと百貨店業界に POS が認知され始め、我々はさらに「POS とは何ぞや?」を深耕させる議論をしてきた。その後、伊勢丹浦和新店、三越等の POS導入も支援し、その間 1979年には緑屋(現クレディセゾン)でのクレジットオンラインシステム、1985年には横浜そごうでの POM(発注仕入管理システム)といった POS周辺のシステムも支援した。POMシステムについては、その後博多大丸の支援も行った。

プロジェクトマネジメント

多人数のメンバーを抱えたプロジェクトのマネジャーとしては、1981年の伊勢丹浦和店の開店と同時稼働した POSシステムが最初であった。これは良い経験になった。それまでのただ頑張っているだけのやり方ではダメで、本当に小売業の方と一体になっていないといけないと実感した。

マーケティング担当時代

次には本部で POS のマーケティングを担当した。マーケティング的なことは色々な内容を次々と行った。製品のマーケティング・プラン、カタログや冊子の作成、セミナー開催、社内トレーニングの開催、営業現場からの販売条件の審査 等々。1989年に実施された消費税に関しては、その前年より POS での具体的処理に関し百貨店各社の方々のご協力を得て、百貨店消費税 POS処理のとりまとめを担当した。少なくとも、百貨店業界に関しては消費税 POS処理の基準を決めたのは NCR であった。

Teradata発売

1992年に NCR がデータウェアハウス Teradata と、それを動かす超並列型コンピュータ(型番3600)を発売した。今日に続くデータウェアハウス・ブームの先駆けであった。ほどなく私は、この Teradata の販売・納入支援に参加することになった。また1993年には NCR米国本社にて小売業ソリューションのトレーニングに参加した。その際に合間で見たウォルマートは多くの事を私に示唆し、帰国後に行った数多くの日本でのウォルマート事例紹介プレゼンテーションの元となった。1994年に開催した欧米の一流講師を日本に招いての社内外トレーニングは、参加者に強いインパクトを与えることが出来た。もちろん筆者にとっても良き師を得たことになる。自身も 1987年と 1995年には日本百貨店協会で講演を行っている。

Teradata 販売の直接サポートとしては、伊勢丹、三越、マクドナルド、良品計画などの提案作業に参加した。また、すでに Teradata のユーザーとなられた企業のその後の改善提案にも多く参加している。

今は、コンサルタント

長年、コンサルティング的な事をベースにしながら小売業の方と接してきているが、最近は正式にコンサルタントとして働いている。日本小売業協会での 2回の講演、データウェアハウス&CRM EXPO での 2回の講演、チェーンストアエイジ誌やストアーズレポート誌での連載、当小売業向けメールマガジンの連載、社内でのトレーニングの講師などをしながら、あくまでも主業務は小売業各社のコンサルティングである。データウェアハウスの検討段階、導入作業中、導入後の次期改善検討中といったいろいろな段階で、コンサルティングしている。 特に、2000年に行ったイトーヨーカ堂における Teradataユーザー面談調査とその報告や、2000年から 2002年にかけて行った大丸の Teradataコンサルティングはその典型で、私にとっては大きな意味を持っていた。

いわゆる世間にあるビジネスコンサルティング会社が上流とすれば、私は中流のコンサルティングであって、ビジネスとシステムをつなぐものを仕事としている。当然 Teradata には下流をカバーするシステムエンジニアがいるので、私の場合には最終的に動かないものをコンサルティングすることはまず無い。実際のコンサルティング対象は、小売業全般の経営陣から現場の方々まで、また、システム担当の方だけでなく、MD やマーケティングの方々も…という風に、あらゆる部署になっている。

連載にあたって

以上が私の大まかな履歴書である。と同時に小売業がシステム化に取り組み、進化を続けてきた歴史とも重なっている。このような中で私が培ってきた「想い」や「心」は、ユーザー側に立つ小売業の皆様とも、システム構築を支援するベンダー側の諸氏とも共有できるものであると信じている。「技術」や「手法」は常に流行りと廃りを繰り返す。しかし、ビジネスに役立ちたい、小売業の方々に明るく元気になっていただきたい、そして良いシステムを作りたいという「想い」や「心」は、時間や立場を超えて普遍なはずである。

今連載では、そんな私の小売業ビジネスとシステムにかける「想い」や「心」を書きたいと考えている。変化対応が仕事の小売業やIT業界において、変わらないものは何かを考えたり、世間で常識と思われていることが実は非常識であったり、といった点などを、毎回 2テーマほど取り上げて書いていく予定である。

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