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最終回は、ビジネス・インテリジェンスとして今後求められる要件を考察します。
本連載の第2回では、効果的な経営管理や業務改革を行うために情報統合が必要であることを述べ、それを実現するための
KSF を第4回と第5回で紹介しました。また、多くの職責や部門における情報活用の場面を第3回で見てきました。そうした要点と企業における競争環境をふまえ、データウェアハウス(以下、DWH)を利用して更に高度なビジネス・インテリジェンスをめざす際の方向性と要件を整理します。
はじめに、企業が環境に適応しつつ競争優位を確立する施策を概観します。成功している企業をみると、次の 3つのような共通の施策が見出せます。
1. 現場の実践力を活かす事業戦略の採用
日本企業が外国企業より優れているのは、現場の実践力にあるといわれています。昨今の経営戦略では、経営層が事業戦略を構想する過程で、バランス・スコアカードなどの方法論を用い、現場の実践力を企業の総合力に結びつける手法を採用する事例が増えています。現場担当者は、職務の専門性を活かした業務を日々行っています。時間軸が短くなる競争環境で、現場レベルで最新の情報を活用し、一貫した対応をとる企業が優位性を発揮しています。
2. 顧客対応力の強化
顧客との密接な関係は、顧客を識別し、求められる商品やサービスを最適なチャネルとタイミングで提供することにより実現します。取引履歴や直前の折衝記録は、必要とされる商品やサービスを知るために極めて有効な情報です。現場の担当者はこうした情報を直接利用し、適切なチャネルとタイミングで顧客にコンタクトしています。
3. 企業内活動やノウハウによる差別化
これまで企業は商品やサービスで差別化を試みましたが、多くは時間の経過と共に模倣されました。最近では、企業内の活動やノウハウに独自性を発揮し、模倣されにくい商品やサービスをつくることで業績を伸ばす企業が出ています。そうした企業では、独自性を内部で模索・開発する必要があるため、密接な情報共有が欠かせません。
以上を総括すると、ビジネスを優位に導くためには次のような施策が重要になることが判ります。
一方、これまで多くの企業で現場を支援してきた意思決定は、現場で別個に蓄積された情報を判断や行動の拠り所にすることが多く、いくつかの矛盾を抱えていました。
各企業は、自社で発生する情報を活用してビジネスを優位に導きたいわけですが、現場レベルでは一貫せず、鮮度も保証されないまま使われ、機会を逸していることもあるということです。
こうした矛盾を解決しつつ、上に挙げた施策を実現することが、今求められています。
変貌する環境に適応し、現場担当者に判断と行動を委ね、顧客の要望をつかんで行動するために重要なことは、最新の情報をいち早く捉え、現場担当者に必要な情報を提供することです。これまでの戦略的意思決定を支えるビジネス・インテリジェンスに、現場で使うオペレーショナルなインテリジェンスを加えたアクティブ・エンタープライズ・インテリジェンス(以下、AEI)がそれを実現します。これは、エンタープライズ・データウェアハウス(以下、EDW)に、進行中の事象を捉える技術を追加したアクティブ・データウェアハウス(以下、ADW)を、現場の状況や顧客の対応にそのまま利用する概念です。
AEI は、第一線の現場で ADW を活用して価値を出すことです。これは、これまでの現場の意思決定が一貫性を欠き、部門間の情報共有もなされず、最新の情報にも基づかなかったことと対極をなします。ADW の「Active」は「進行中」のビジネスを捉えるという意味であり、AEI の「Active」は「ニアリアルタイム」かつ「能動的」に現場を支援するという意味です。
一般に意思決定を通じて価値を享受するには、ビジネス・イベントの発生からデータの捕捉、知識の取得、アクションの実施と 3段階を経ます。イベントは予期せず発生するため、ビジネス価値を高めるためには、アクションの実施を早めることが重要で、各段階をつなぐデータ待ち時間、分析待ち時間、意思決定待ち時間を短くする必要があります(図1、図2)。
つまり、AEI を実現する ADW に必要な技術要素は次のようなものになります。
先ず、データ待ち時間を短くするには、発生したイベントを瞬時に検出し、速やかに DB へロード(アクティブ・ロード)するとともに、その事実を関係する担当者やシステムに知らせる、トリガー機能が必要になります。例えば閾値を設定し、閾値を越える状況になると自動的にメールが送信され、現場にアクションを促すような使い方です。
分析待ち時間や意思決定待ち時間の短縮は現場の力量に依存しますが、担当者は目の前の顧客や事象に対応中であるため、彼らを支援する業務環境は重要です。簡便な操作性と5秒以下といった短い応答時間で、必要な情報を直ちに得られなければなりません(アクティブ・アクセス)。
トリガー機能のようなアルゴリズムの起動には、DB の内容に応じて自動的に動作する仕掛けが必要になります(アクティブイベント)。
また、現場の業務オペレーションを支援する環境下で業務の中断は許されませんので、可用性も重要な要件です(アクティブ可用性)。
さらに、一つの DWH をビジネスの様々な局面で活用するためには、他システムとの連携(アクティブ・エンタープライズ統合)が必須です。また、様々な戦略・戦術クエリー、イベント処理、日中のデータロードといった特性の異なる処理要件を同時に満たすためには、戦術クエリーを優先させるといった負荷制御機能(アクティブ・ワークロード管理)が求められます(図3)。
他社に先駆けてビジネスの好機をつかむためには、リアルタイムに情報を読み取り、迅速なアクションに結びつける必要があり、AEI はそれを全社レベルで実現します(図4)。
今後もビジネス環境は急速に変わることが想定されます。それに対応するためには、意思決定プロセスも業務プロセスと共に変えていく必要があります(第1回)。EDW はそのための強力な武器です。
冒頭で企業内活動やノウハウで差別化することの重要性を述べましたが、情報活用の仕組みや時間の使い方は企業に独自で、差別化するノウハウそのものです。
適者生存という進化の法則は、変化の激しい現代のビジネス環境でことさら顕著です。究極のビジネス・インテリジェンスは、変化への適応力を備えた進化の仕組みそのものです。統合化、共有化した情報基盤を用いてリアルタイムにビジネスの動きを捉え、第一線の現場を支援することが重要です。Teradata を用いた AEI だけがそれを可能にします。