ホーム > ライブラリー > Teradata Insight > エンタープライズ・データウェアハウスの価値 > 第1回:業務プロセス改革から意思決定プロセス改革へ
ビジネスのさまざまな局面で発生するデータを統合・一元化したエンタープライズ・データウェアハウス(EDW)は、業務プロセスを顧客中心に見直すビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)を強力に支援します。経営トップによるリーダーシップと競争優位の源泉としての現場実践力を高い次元で融合させ、中長期経営計画を実行しながら、現場の業務オペレーション最適化を可能にします。
皆さんの企業で BPR、即ち業務改革は進んでいますか?BPR は 1980年代、米国企業が日本企業に打ちのめされた時期に、米国側が日本企業を分析した結果として編み出したビジネスの構造改革手法です。日本でもバブル崩壊から失われた
10年と、そこから続く景気低迷を背景に、多くの企業が採用に踏み切ってきました。今回はその BPR とデータウェアハウジングの関連について説明します。
昨今、BPR の実態として次のような話をよく聞きます。
結論としては、日本企業の BPR は多くの課題を残しています。その原因は、BPR や ERP の目指すところを正しく理解しないまま改革プロジェクトを推進させたところにあるのではないでしょうか。そもそも BPR や ERP は、米国型の経営トップの強いリーダーシップを前提にした構造改革手法です。一方で多くの日本企業の経営スタイルは調整型を是とし、コミュニケーションを通じて強い現場を活かすことに主眼を置いてきました。この米国型と日本型の考え方の違いとその影響を認識しなかったことが最も大きな問題であり、後に続く別の課題を複雑にした要因でもあります。
米国では、ERPパッケージを導入してコストメリットを享受できた厳然たる実績があります。リストラの最中にあった多くの企業では、現場の声はどうあれ、当然の帰結として ERP導入に固執しました。現場は、既存業務こそがこれまで築き上げた競争優位の源泉であることに自信を持っており、パッケージをそのまま導入して既存業務を変えることを受け入れられませんでしたが、会社の方針には抗し切れませんでした。結果として、手段としての ERP導入と目的である BPR を履き違え、重要であるはずの業務プロセスの見直しをおろそかにしたまま、パッケージの導入を実施しました。
そのやり方は、パッケージをそのまま利用するものの、現場に合わせ、その周辺に独自開発分を含める方法やパッケージ自体を大きくカスタマイズする方法で、独自色も併せ持つという形態です。日本人が得意とする擦り合わせの技術を用いて、一見上手く解決できたように見えますが、これがその後の保守費用の増大につながっていくことになるのです。
よくいわれることですが、独自のノウハウが競争優位の源泉になりうるような業務には、そのまま利用できるパッケージは存在しません。結局、自社のコアコンピタンスの部分をどうやって BPR するか、という根本的な課題を解決しない限り、ERPパッケージを利用しても問題は解決しないのです。
米国を見ると、下記のようなパターンが成功事例の代表となります。
ここでいう顧客とは、消費者のみならず企業の取引先も含みます。 そもそも、米国流の構造改革手法がそのまま日本人のビジネス観に馴染むとする考え自体に無理がありそうです。
ここで、上記までの結論をまとめておきます。
日本にも、BPR や ERP の導入に成功している企業は多くあります。そのような企業はこれらのポイントを押さえているのではないでしょうか。
今、必要とされているのは、次に示す経営の実践に関し相反する概念を社内外の環境要因を念頭におきながら分析・評価し、価値と実現性の優先度を決定する総合的な意思決定能力、といえるでしょう。
企業における総合的な意思決定能力は、EDW の得意とするところです。それは EDW による意思決定支援環境が、これまで述べた日本企業が抱える BPR の課題を解決する能力を備えているからに他なりません。
BPR の原点は、あくまで顧客中心主義に則ったビジネスプロセスの抜本的な見直しにあります。そこでは、現場部門そのものがリエンジニアリングの対象にもなります。現場には、あらゆる業務から顧客中心でない部分を見つけ改善する責任があります。EDW に統合された顧客情報や業務の履歴から、ビジネスにとって最も重要な資産であるはずの顧客の活動や動向・嗜好と、現場の業務プロセスの関連を紐解いて評価すれば、本来行うべき重要な機能や業務の改善課題は見えてきます。そのようにして顧客の情報をベースに業務プロセスの根本的な見直しがなされれば、ERP の導入いかんに関わらず BPR の本来の姿は全うしている、と判断して良さそうです。現場部門にとって業務プロセスや顧客情報の可視化は必然であり、EDW はそこに大きな解決法を提供することになります。
EDW は、経営トップによる戦略立案・実行と、現場による業務実践の整合性を高い次元で融合させます。
経営者は、様々な環境要因を並べて帰納的に決定を導く手法ではなく、あるべき論に立脚した演繹的な意思決定を行う必要があります。そこにリーダーシップが求められます。業務のいかんに関わらず顧客中心であるべき、という具体的な方針の決定と徹底であり、このような BPR の方針無しに、ERP導入を叫ぶのは失敗につながりかねません。 一方で日本企業の現場には強い実践力があり、その一部は競争優位の源泉を形成しています。
EDW を利用すれば、リーダーシップと強い実践力という概念を両立させることが出来ます。EDW には、ビジネスの現状をありのまま伝える情報が保有されているので、マクロ的な観点で事業の概要を押さえ、ビジネスを俯瞰しながら顧客を中心とした中長期的な戦略を立案し施行することが可能になります。第一線の現場では、ミクロな視点として顧客情報が明細レベルで揃っているため、眼前の顧客を直接サポートすることも、改革が必要な顧客中心でない業務を押さえ、調整することも可能になるのです。
まとめると、EDW による業務プロセスを横断的に俯瞰しうる情報環境は、BPR としてのビジネスプロセスの抜本的見直しを直接的に支援するということです。つまり、経営トップによる顧客を中心とした戦略形成を支援する一方で、現場レベルでは業務オペレーションに着目して各工程における依存性や優先度、権限の責任範囲、さらには品質基準といった側面に、細部まで検討が可能になる環境を提供します。そのような環境では、EDW は経営層だけでなく現場部門にも重要な情報資産となります。また、元となる情報は一箇所に矛盾なく蓄えられたデータであることから、戦略的な中長期的視点と、目の前の課題を解決するための戦術的施策が両立しやすい環境を同時に兼ね備えています。顧客への施策と業務プロセスが、戦略的視点と戦術的施策を伴って整合する環境こそが、企業のリーダーシップと現場実践力を融合させて高め、日本の BPR を新しい局面に導く基礎になるのです。
さて、BPR に関連して日本企業の多くは次の段階に差し掛かっています。
これらは日本の経済が危機的な状況を脱し、これから徐々にその活路を広げる展望が見えてきた、といった経済情勢に裏打ちされています。しかしながら、思想や価値観の多様化、少子高齢化、就業人口の減少、所得格差の拡大といった社会的変動要因が重なり、ビジネス環境は更に複雑度を増していくと思われます。多くの環境変化が企業の業務遂行に多大な影響を及ぼすことは必至です。今後は、現場実践力はいうに及ばず、今以上に経営トップによる意思決定の重要性が問われるでしょう。新しい局面では、EDW を通じて全ての業務プロセスを横断的に最適化させる方向に向かうことが想定されます。 全体最適を指向するその領域には大きなチャンスが眠っています。