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分類コードの考え方とその実践

岡本 正昭 (おかもと まさあき)
流通ソリューション事業部
エグゼクティブ・コンサルタント

「第1回」なぜ今、分類コードか?(分類の必要性、コードの必要性)

小売業において「POSを導入したが、その活用効果(ソフトメリット)が出ない、データベースを導入したが、その活用効果が出てこない」と思われている経営陣は多いと思う。特に、「顧客マーケティング、マーチャンダイジング、営業管理といった、小売ビジネスの中核に IT が役立たない」というケース。どんな良い道具もうまく使いこなすには、使う人間に宿る知恵の存在が不可欠である。その知恵の一つが、今回連載で取り上げる「分類」や「コード」である。「分類」や「コード」を使うことで、人間の頭の中は整理され、他人とのコミュニケーションもし易くなる。しかも人間とコンピュータ・システムとのコミュニケーションも可能になる。今回を含め12回連載で小売業の重要課題の一つ「分類コード」を取り上げる予定である。

「分類」する意味

分類は英語でクラシフィケーション(classification)、またはクラス(class)と呼ばれる。では、なぜ分けるか、という点を考えたのが図1 である。

図1. 分類する意味…「なぜ分けるか?」
  1. は動きの把握/保存のため。
  2. は計画/実行のため。
  3. は責任範囲明確化のため。
    ・例えば色々な商品を扱う百貨店では、新人が売場に配置されたときに上司が「あなたは、値札のここに 101 と書いてある商品が担当ですよ」と言ったほうが明確になる。商品の形状や特性を説明して、「あなたの担当はこういったものです」と 100回説明するよりも早い。
  4. は顧客ニーズの把握のため。
    ・ニーズやライフスタイルといった元来抽象的/情緒的なものをなるべくデジタルに分類することは、すべての社員が共通理解を得るための助けになる。
  5. は外部コミュニケーションのため。
    ・1 から 4 は社内のコミュニケーション用であったが、外部に対しても的確なコミュニケーションをするためには、分類しコード化することが適切である。
    ・例えば JAN(Japanese Article Number)コードが世間の標準語であり、取引先が、自社特有の情報を社員同様の視点で把握するためには、社内のクラスコードを取引先に知ってもらうことが不可欠である。

そしてただ分けるのではなく、それをコード化することで、社員全員の情報共有、コミュニケーションが可能になり、かつコンピュータ化しやすくなる。つまり、コード化はアナログでも効果があり、デジタルでも効果がある。

図1 の下側の楕円の中には、一般的に小売企業で、分類コードという範疇に入るものを羅列してある。もちろん特定小売企業がこれらのコードすべてを使っているのではなく、色々な企業の、色々なコードを寄せ集めたものである。こういった類の話だ…と理解いただくためのものである。

近代経営手法と分類

図2 では、もう少し背景にさかのぼって「分類」を考えている。

図2. 近代経営手法と分類

昔は各ビジネスが小規模に行われていて、きめ細かく顧客ニーズに対応しようとしていた。 ところが、各業界ともビジネスが大きくなってきた今から少し前の時代には、ビジネスを統一的な手法で実践し、顧客に統一的に対応することが効率的だと考えられてきた。これは大量生産/大量販売が効率的とされた時代である。 小売業で言えば古い意味のチェーンストア理論であり、製造業で言えばベルトコンベアによる流れ作業である。

ところが時代が変わり、消費者(または生活者)の消費の多様化が進むことによって、きめ細かいニーズへの対応が再び求められる時代に戻った。一方で昔と違って、全体としては大量顧客、大量消費を充足せねばならなくなった。いわゆる「マス・カストマイズ」(きめ細かい顧客対応を大量に実現する)が求められている。 自動車工場では、同じ流れのライン中で各顧客ごとのオプションをつけた車が前後して製造されていく。なぜなら、標準化されたパーツや塗料の組み合わせが膨大に可能であるからだ。あたかも顧客は自分スペシャルの車を手に入れたような気になっている。

同様に小売業においても、同じ日の同じ時間帯に来店した 100人の顧客から、それぞれ自分スペシャルのような応対が期待されている。DM やメールや店頭KIOSK での案内がきめ細かくなり、商品も自分に合わせたものが並んでいる…と思ってしまう。 この状況をローコストに、いかにして作り出すかということを経営としては考えねばならない。

そこで出てきたのが、図2 の中央にある枠内の考えである。ビジネスの諸要素を分類して考える。その分類されたグループごとに対応を変える。こうすると各要素内のグループごとに掛け算で対応策が決まるので、まさにマス・カストマイズとなる。

例えば、消費者Aさんには顧客グループ「ホーム志向」、店舗「大型SM」、商品「生鮮食品」、期間「第32週」…と特定化されたものが提供される。社内的にも同様で、社員Xさんは社内業務「品出し担当」、社内組織「物流センター」、人材「ランクB」ということで給与が決まってくる。

こういった考えを実践することで「最大の顧客サービスと最少の投資の両立」を目指すわけである。このように、最近の経営成功のためには「分類」が欠かせないわけである。

図2 の中で“カテゴリー/グループ/クラスター/パターン”と並べて書いてあるのは、これらすべてが用語は異なるが意味は同じで、「かたまり」ということであり、連載の中でもその時々に、あまり深い意味も無く使い分けられているとご理解いただきたい。

2つのカテゴリー・マネジメント

次に話したいのは、前章の「近代経営手法と分類」で述べた小売業ビジネス要素の中でも、最近特に重要と思われている 2系統の分類についてである。
2系統とは図3 で示される、商品系統と、顧客系統である。

図3. 2つのカテゴリー・マネジメント

ずっと以前から小売業には「商品」を管理するという考えはあり、それが発展して、「商品カテゴリー・マネジメント」が大事だといわれるようになってきた。 ここで強調されるのは、商品カテゴリーを選任担当するカテゴリー・マネジャーの存在だ。担当のカテゴリーに関しては仕入・補充といった本部機能のすべての責任を負うという考え方で、従来の仕入はバイヤー、補充はディストリビューターといった分業を極力排除することになる。「商品カテゴリー・マネジャー」は、一般的には略して単に「カテゴリー・マネジャー」と呼ぶ。

一方で CRM や FSP の登場で、顧客のマネジメントをどう考えるかがそろそろ話題になってきている。 新しい考え方では、商品と同じように顧客もカテゴリー分けして、各カテゴリーの選任担当マネジャーを置く「顧客カテゴリー・マネジメント」制度が注目されている。確かに現在の顧客担当要員は、午前中は全員で新規獲得キャンペーンを会議でプランし、午後はまた全員で来月のプラチナ顧客招待セールを検討している。これは商品で言えば、商品本部の人が全員で午前中は精肉の計画をして、同じ全員が午後はセーターの来期プランをしているようなものである。 商品でナンセンスな事を、顧客で実施しているのではないか…という反省が「顧客カテゴリー・マネジメント」登場の背景である。その場合、「顧客カテゴリー・マネジャー」は朝から晩まで担当の顧客カテゴリーに属する顧客への奉仕をのみ考えればよい。

なお図3 の顧客カテゴリーは“プラチナ/ゴールド/一般/見込み客”となっているが、これは商品と同様サンプルに過ぎない。ようはこの企業が最適と考え分類した顧客カテゴリーがここに位置する。

実際には図3 のように 2つのカテゴリー・マネジメントはマトリックス的にクロスして実施される。当然判断や企画の衝突が起こる。例えば、ゴールド顧客カテゴリー・マネジャーが再来週はスーツのキャンペーンをやりたいと企画したが、スーツ・コート担当の商品カテゴリー・マネジャーは 4週後に大々的なスーツ・キャンペーン(全顧客対象の)を企画していたかもしれない。この場合、まずは両カテゴリー・マネジャーが相談し問題解決を図るが、どうしても統一案が出ないときには、顧客カテゴリー・マネジャーの考えを優先することになる。

当連載では、主に商品や店頭の販売に関するカテゴリーを取り扱うが、顧客のカテゴリー分けも論理的に行うのは興味あるテーマである。 特に小売業においては顧客を単に属性(性別、年代、住所、年収、家族構成…)でカテゴリー分けするのではなく、購買の行動に主眼をおいてカテゴリー分けすることが重要だと思う。 顧客購買カテゴリー分けについては、昨年メールマガジンで連載した、「購買行動分析による消費者理解」の第9回第10回「購買ライフスタイル・カテゴリー分析」を参照されたい。

当連載の想定対象

図4 は、当連載をどういう読者を想定して発信しているかというリストである。

図4. 当連載の想定対象

非常に広い読者層が想定されるので、特定企業や特定個人の目から見ると、ヒット率は悪いと思われるが、連載を通して何か一つでもヒントを得ていただければ幸いである。

なお次回の第2回では、現状よくある「分類コードにかかわる問題点」を具体的に取り上げてみたい。

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