ホーム > ライブラリー > Teradata Insight > 購買行動分析による消費者理解 >「第3回」購買分析実践のポイント:バスケットに注目する意味
岡本 正昭 (おかもと まさあき)
流通ソリューション事業部
エグゼクティブ・コンサルタント
ほとんどの場合、小売業の方は新人教育で 「売上=客数×客単価」 と教わる。また、商品の良否の判断として、売上が多い商品が良いモノと教わりもしないが信じて来ている。購買分析ができるようになった今、こういった従来の考え方が本当にそれで良いのか?というのが今回の話である。
まず、図1に 「購買分析のポイント」 を示し順に説明する。
お店に貢献している商品は何かを知るには、従来はよく売れている商品や粗利の高い商品がそうだと考えられていた。たとえばカテゴリー内で単品を絞り込むなら、データを見て売上の低い商品や粗利の低い商品をカットしていた。
ここで、図2 「商品で見るか バスケットで見るか・・」 を見て欲しい。
この図で上半分は従来の見方である。青りんごは赤りんごほど売れないので、品揃えからカットするなら青りんごだ・・と誰でも思ってしまう。ところが実際の売れ方は図2の下半分のようであった。つまり赤りんごの入ったバスケットは、青りんごの入ったバスケットより売上が少ない。別の言い方では、赤りんごを買う顧客より、青りんごを買う顧客の方が高額な買い物をしている。頭が混乱しそうであるが、どうしてもどちらかをカットする必要があるなら赤りんごをカットするのが正解である。いわば個人プレーよりチームプレー重視で、結果、優勝するチームになりたいのである。このようなバスケットに注目した見方により本当に大事な商品や、本当に大事な顧客を見つけることができる。
第2回でも触れたように、インストア・マーケティングにおいてクロスセリングを促進できれば店舗全体の売上アップに貢献できる。最近は何となく関連がありそうな商品同士を近接して陳列することは行われている。しかし、どれくらいの効果があるかはやってみないと分からない。また、店員側には分からない隠れた関連同時購買もありそうである。そこでバスケット分析により関連性を可視化することで関連効果も数値化できるし、意外な組み合わせも発見できることが注目されている。
一方、クロスセリングと同じ原理で、その逆のカニバライゼーションも把握できる。これはA商品が買われた場合、そのバスケットにはB商品は入りにくい(買われにくい)ことを可視化することである。いわゆる相性の悪い商品同士を見つけて、陳列や販促の参考にする、またその結果を検証するという考えがとれる。
購買分析で得た結果を単に、「ああ、そうなんだ」 で終わらせてはいけない。そこからさらに追求して、そうなった原因を知ることが大事である。図1の例では、ある店長が今月の売上が前年比110%であったので喜んだ(現象主義)が、実はその110%の原因要素を分解してみると、購買顧客数が90%に落ちていること(原因主義)が分かり、大慌てすることが解き明かされている。この例では、バスケット当たりの点数が増え120%になったことが店舗売上前年比110%の大半のプラス要因となっているが、このバスケット当たりの点数は短期的効果であり、一方で購買顧客数の減少は長期的であるが故に、より深刻であると想定できる。こういった因数分解的な見方で原因を追及することで次のアクションが変わってくるはずである。
ビジネス担当の方やシステム担当の方が共通して陥りやすい落とし穴は、情報分析で同じ結果が出ると、何となく安心してしまうということである。そして報告も、「A商品もB商品も同じ傾向でした」 で済ませてしまう。およそ商品間、地域間、店舗間、顧客層間でその実績が同じであることの方がおかしい。どこかに違いがあるはずだ、という見方で追求しないと真の姿が見えないし、本当に今必要なアクションも見えてこない。もし同じ結果が出ている場合は、偶然、ある要因と別の要因がプラスマイナス相殺し合って、たまたま同じ結果であったと考えた方がよい。
PDC、PDS、PDCA、PDCS等ビジネスの 「仮説/実施/検証型サイクル」 はよく言われることである。小売業も全く同様でこのサイクルで行動しなければならない。そして情報活用もこのサイクルと直接的に関係している。つまり仮説の時に情報を分析し、たとえば翌週の検証時にもう一度同じ情報を活用するということである。こうすることで、1回しか使わなかった情報に比べ何倍にも情報活用効果が産まれてくる。
カテゴリーに分ける(分類)、そのカテゴリー間を比較する(違いの発見)、当該カテゴリーを経過比較する(仮説と検証)、は近代のビジネス手法の典型的な基礎要素である。
今回の最後に、図3 「バスケットに注目した原因把握とアクション」 を示しておく。その昔の 「客数×客単価=売上金額」 という公式は今やこう書き換えられるべきだといえる。