ホーム > ライブラリー > Teradata コラム > Ask the Expert 「Teradataのリアルタイム・エンタープライズ・リファレンス・アーキテクチャ」(1)
サンディエゴからシカゴに向かう飛行機が雷雨に遭遇し、悪天候を避けるため飛行ルートを変更しました。モニタリング・システムは新しいフライト計画を受け取り、その情報を航空会社のアクティブ・データウェアハウス(Active Data Warehouse:ADW)に転送します。ADW 内のイベント検知処理サービスは、この飛行機の到着が定刻より 45分遅れると判断しました。そしてそのメッセージは一連の戦術的ビジネス処理サービスに送られ、乗客名簿を分析し、5人の乗客がニューヨークへの乗継便に乗れず、さらに 3人の乗客がピッツバーグへの乗継便に乗れないと結論づけました。
ADW は、シカゴからニューヨークへ向かう別の便は 2つあり、シカゴからピッツバーグへ向かう便がもう 1つあることを把握します。この状況とこれら 3便の空席状況をチェックした後、ADW は各顧客の収益性、購入した航空券の種類、マイレージ状況、好み、その他いろいろな要因を考慮して 8人の乗客の優先順位を決定します。
そして ADW は予約システムに対して、到着遅延により影響を受ける 8人の乗客のために代わりの便の座席を予約するようメッセージを送ります。それに応じて荷物の送り先も変更し、最後にこれらの乗客に対してその旨を通知します。
状況を分析し処理している間に、乗り継ぎできない乗客のうちの 1人は、最近何度も飛行機の遅延に遭遇していることがわかりました。そこでその情報はイベント通知機能により適切なアプリケーションに送られ、謝罪の手紙や今後のフライトで利用できるアップグレード・クーポンが作成され、顧客に郵送されます。
このように、この航空会社は緊急事態が発生してもリアルタイムで解決し、優れた輸送サービスに全力を挙げていることを顧客に示す良い機会として活かすことができました。リアルタイム・エンタープライズITインフラストラクチャにより、この航空会社は該当する顧客に適切なアクションをとることができました。
リアルタイム・エンタープライズ(Real-Time Enterprise:RTE)とは、テクノロジーを駆使し、重大なビジネス・イベントの発生から、それに対応するまでの時間的な遅れを短縮している企業のことを意味します。RTE におけるユーザーは、社内とのコミュニケーションを簡単に行える企業ポータルを利用して、すべてのシステム・サービスにシームレスにアクセスしたいと考えています。Teradata の ADW は、RTE に最適な意思決定サービスを実現できる強靭かつ柔軟なプラットフォームです。
各サービスはどのように相互接続されるのでしょうか?
Teradata の RTEリファレンス・アーキテクチャは、ADW を RTE に組み込む手法を示す青写真の役割を果たします。このリファレンス・アーキテクチャは、データ、アプリケーション、ユーザーを全社レベルで統合するために利用できる、最新テクノロジーの組み合わせを意味します。

トランザクション・リポジトリは、トランザクション・システムがトランザクションやインタラクションの結果を記録するのに利用する、永続的なデータベースです。一般にこれらのデータベースは、トランザクション処理要件を満たすために必要な最低限の履歴データを保持しています。
例えば、顧客が銀行の ATM から預金を引き出すと、デビット/クレジットなどのビジネス・トランザクションが発生します。ATM のサービスは、実行された ATMトランザクションに基づいてひとつもしくは複数のトランザクション・リポジトリを修正し、定められた方法で企業の会計処理(貸方、借方、残高記入など)を行います。各トランザクション・システム(小切手、クレジットカード、ローンなど)は、トランザクション・ビジネス・サービスの応答時間をできるだけ短縮し、処理能力を最大限に高めるように細かくチューニングされます。

分析および意思決定リポジトリは、全社規模の詳細な “履歴データ” を蓄積しており、すべてのビジネス領域のデータや参照データを保持しています。この “履歴データ” は、全社規模での分析および意思決定プロセスを支援する分析や検索に利用することができます。
分析および意思決定リポジトリの導入に際しては、様々な種類のアーキテクチャやコンポーネント(データベース、データマート、ODS、ハブ・アンド・スポーク、ステージングエリアなど)の中からどれを利用するかを決める必要があります。Teradata の RTEリファレンス・アーキテクチャでは、分析および意思決定リポジトリに単一の統合エンタープライズ・リポジトリ、即ちエンタープライズ・データウェアハウス(Enterprise Data Warehouse:EDW)を採用すべきだと提唱しています。なぜなら、EDW は絶えず変化するビジネス上の問い合わせに、迅速に対応できる柔軟性を備えているからです。
従来の意思決定リポジトリでは、トランザクション・リポジトリが表す最新状況よりも数日、数週間または 1ヶ月前の履歴しかわかりませんでした。しかし RTE では、ビジネスプロセスが要求するサービス・レベルによってデータ鮮度要件が決まります。したがって、履歴データは、企業の第一線(顧客サービス、生産現場、空港のゲートなど)での迅速な意思決定をサポートできるように、精度と鮮度が高いデータでなければなりません。
Teradata の RTEリファレンス・アーキテクチャでは、分析および意思決定リポジトリであらゆるデータ鮮度要件にも対応できる履歴データの格納を実現しています。

企業の明細データのほとんどは、トランザクション・リポジトリから取得されます。データ取得および統合要素は、社内だけでなく社外の各種ソースからもデータを収集し、様々なビジネス領域のデータを統合させて、その結果を分析および意思決定リポジトリに格納します。
従来このデータ移動は、バッチ・プロセスを利用して定期的に行われていました。ETL(Extract、Transform、Load:データの抽出・変換・ロード)ツールは、データを各種ソースから収集し、データの変換、クレンジング、および統合を実施して意思決定リポジトリに格納し、また各データベース固有のメカニズムとやり取りしながら、目的のリポジトリにデータを高速ロードする機能を提供します。
俊敏な意思決定を行うために、いくつかのツールセットは、ストリーミング方式で継続的かつ高速にデータ取得できるように進化しています。ETLツールでは、データを収集し、統合および変換を行い、例えば Teradata TPump のような継続ロード機能を利用してリポジトリにデータを連続的にロードするストリーミング機能が追加されました。エンタープライズ・アプリケーション統合(Enterprise Application Integration:EAI)やメッセージ・バス・ツールは、複数のソースシステムからデータを連続して意思決定リポジトリにストリーミングするのに役立ちます。そのバス上のアダプターは、データを直接扱うことができるだけでなく ETLツールと一緒に使用して、データを変換することもできます。さらに異機種レプリケーション・ツールを使えば、更新されたデータをトランザクション・リポジトリから直接収集して ETLツールに渡したり、あるいは、直接、意思決定リポジトリに変更を適用することができます。

トランザクション・サービスは、アプリケーション・コンポーネント群で構成されています。各コンポーネントは、特定の領域の一連のビジネスプロセスに特化しています。通常これらのサービスは、全社規模で、トランザクションを処理している現場のユーザーと直接やり取りします。
これらのサービスは、標準データベース・インターフェースを利用してトランザクション・リポジトリともやり取りします。今のところ、サービス指向アーキテクチャ(Service-Oriented Architecture:SOA)を利用して構築されていますが、従来のクライアント/サーバー・アプリケーションもしばらくは使われると思われます。トランザクション・サービスは、企業の最新のトランザクションやトランザクション・リポジトリへのレコードの記録の変化を把握するためのカスタム・アプリケーションおよび市販のアプリケーションを組み合わせたものになるでしょう。

分析および意思決定サービスは、各リポジトリに格納された “履歴データ” を分析し、企業のビジネスプロセスを促進する幅広い知見を生み出します。これらのサービスは、戦略的意思決定および戦術的意思決定の両方を可能にします。戦略的意思決定は、ビジネスで長期的な決定を下すのに必要な情報を提供します。マーケット・セグメンテーション、商品カテゴリー管理、収益性分析、予測などの様々なビジネス業務をサポートします。戦術的意思決定は、企業がリアルタイム・エンタープライズへの進化を可能にするための重要な要素のひとつです。顧客サービス担当者、工場の生産現場担当者、空港のゲート担当者といった、企業のビジネス戦略を実行している最前線の社員を支援します。
分析および意思決定サービスは、標準的なデータベース・アクセス・インターフェースを介して分析および意思決定リポジトリとやり取りします。一般に、戦略的意思決定のためのアクセスは、ビジネス・インテリジェンス(Business Intelligence:BI)、レポーティング、OLAP、クエリー、データマイニング・ツールなどのクライアント/サーバー・アプリケーション、または具体的なビジネスプロセスに特化した分析アプリケーションにより行われます。現場のアプリケーションは、多くのユーザーの多様な期待に応えなければなりません。戦術的意思決定サービスをサポートする最善の方法は、トランザクション・サービスをミラー化する SOA によるアプローチです。トランザクション処理での戦術的ビジネスプロセスは、柔軟性を実現するために SOA方式を採用するケースが増えてきています。SOA を使えば、BI をビジネスプロセスに簡単に組み込むことができます。
Copyright (C) Teradata Magazine - March 2005